近年、トレーニングや体作りに関する知識が一般に浸透してきた気がします。だいぶ前であれば「プロテインを飲んでいる」というと、筋肉増強剤を使っていると誤解する人もいました。今はそういう誤解も少なくなったと思います。
ご存じの方も多いと思いますが、プロテインというのは、タンパク質を多く含む栄養補助食品です。体作りに必要なタンパク質を普通の食事だけで補おうとすると、食費が高くついたり、食べきれなかったりします。そこで、食事以外にプロテインを補給して、タンパク質摂取量を増やそうというわけです。
「腹をへこますには腹筋運動」という誤解をしている人は、いまだに多いのではないでしょうか。「最近おなかが出てきたから、毎晩腹筋運動をしている」という人に問いたい。腕立て伏せやスクワットをおこなうと、どういう効果があると思いますか。
腕立て伏せをおこなうと、主に胸の筋肉が刺激を受けて発達します。スクワットをおこなうと、主に脚の筋肉が刺激を受けて発達します。それぞれ刺激を受けた筋肉が大きくなるのです。では腹筋運動をするとどのような効果があるでしょうか。腕立て伏せやスクワットの理屈を適用すると「腹筋が刺激されて発達する」ということになります。
要するに、腹筋運動をしても腹をへこませる効果はないということです。厳密にいうと、腹をへこませる効果は少ししかありません。
大雑把にいうと、摂取カロリーが消費カロリーを上回ると、余ったエネルギーが脂肪や筋肉などに変換されて体に蓄積されます。要するに太るということです。逆に、消費カロリーが摂取カロリーを上回ると、脂肪や筋肉などをエネルギーに変換して、足りないエネルギーを補います。要するに痩せるということです。
腹筋運動をすると、カロリーを消費します。消費カロリーが摂取カロリーを上回ると、痩せるというのは前述したとおりです。それは腹筋運動だけに限りません。腕立て伏せ、スクワット、ウォーキング、ランニングなど、あらゆる運動はカロリーを消費します。
ただし、腹筋運動は腹をへこませるには効率が悪いものです。平均的な体重の成人男性が10分間腹筋運動をしたとします。10分間続けると、それなりに疲労を感じるでしょう。しかし、消費カロリーは86kcalに過ぎません。消費カロリーがすべて脂肪の燃焼に使われたと仮定すると(そんなことはあり得ませんが)、約12gの脂肪を減らすことに相当します。
1日10分の腹筋運動を1か月続けたとしましょう。普段運動習慣のない人にとっては、かなり実現が難しいと思います。それでも頑張って1か月続けたら、理論上最大約360gの脂肪を減らすことができます。消費カロリーのすべてが脂肪燃焼に使われることはありませんから、実際の脂肪燃焼効果はもっと少ないでしょう。
また、腹筋運動で脂肪が燃焼するといっても、おなか周りの脂肪が集中して減るわけではありません。そうなったらうれしいでしょうが、そううまくはいきません。脂肪が燃焼するときは、だいたい全身の脂肪がまんべんなく使われます。
ここまでの話をまとめるとこういうことです。
・腹筋運動は腹筋を鍛える効果がある
・腹筋運動によって得られる脂肪燃焼効果は少ない
・腹筋運動によって脂肪が燃焼するとき、全身の脂肪がまんべんなく使われる
要するに「腹をへこます」という目的のためには、腹筋運動はコスパが悪いということになります。一番効果があるのは、摂取カロリーを減らすことです。「食べなければ痩せる」という当然の論理です。
もちろん、極端な食事制限を行うと、痩せはするものの健康を害してしまいます。摂取カロリーを適度に減らしつつ、最低限のタンパク質や糖質を摂取すれば無理なく痩せることができるでしょう。
痩せるときはまんべんなく全身の脂肪や筋肉が減っていきます。脂肪だけ減らせればいいのですが、どうしても一定量の筋肉が減ることは避けられません。普通人間の体は腹回りに脂肪がつきやすくなっています。したがって、全身の脂肪や筋肉がまんべんなく減っていったとき、元々脂肪が多い腹回りが絞り切れないという現象が起きます。
「体重は減ってるんだけどおなかの脂肪だけ取れない」という人がいます。実際には、おなかの脂肪も一定減っているはずです。しかし、元々の脂肪量が多いので、腹だけ痩せないように見えるのでしょう。
巷には「短期間でおなかがスッキリ!」といった魅力的な広告が溢れています。しかし、ここまで書いてきたように、そんなうまい話はありません。10年かけてダブついた腹の肉は、それなりの期間をかけて減らしていくしかないのです。