「ブレインストーミング」ということばを聞いたことがある人は多いでしょう。ブレインストーミングは、複数のメンバーによって行われるアイデア創造法です。一般的なブレインストーミングのルールは以下の通りです。
(1)質より量を重視する
「こんなアイデアは役に立たないだろう」「このアイデアは実現不可能だろう」といった自己規制を設けず、どんどん思いついたアイデアを発表します。
(2)他の意見を批判・否定しない
どんな突飛なアイデアでも批判・否定をせず、気軽に意見を出しやすい環境を作ります。
(3)アイデアをまとめる
アイデアが出きったところで、複数のアイデアをまとめるなどして、発展させていきます。
ブレインストーミングは、1938年、大手広告代理店の副社長アレックス・オズボーンによって提唱されたといわれています。大恐慌で多くの顧客を失った会社を立て直すため、オズボーンはチームのメンバーを集めて広告キャンペーンのアイデアを考えることにしました。
オズボーンがおこなったブレインストーミングによって、GE・クライスラー・デュポンといった大手クライアントの広告キャンペーンのアイデアが次々と生み出されました。この手法が注目を集め、ブレインストーミングは有益なアイデア創造法のひとつとして世界中に認知されています。
私自身、何度もブレインストーミングを行ってきました。しかし、そこで出てきた意見が、大きなインパクトを与えるようなアイデアに発展したという記憶はありません。「せっかくこれだけアイデアが出たんだから、ひとつくらいは試してみようか」くらいのノリで、実用化されたものはありましたが、インパクトの少ない、やってもやらないくても大差がないようなものでした。
ブレインストーミングは効果がないという研究もあります。社会心理学者のミヒャエル・ディールらが1987年におこなった研究で、参加者は4人1組に分けられてブレインストーミングをおこないました。このとき、一部のグループは一般的なブレインストーミングのルールに沿って、4人が一堂に会してアイデアを出し合いました。残りのグループは、ひとりずつ個別でアイデアを考えてから、4人で集まって個々のアイデアをまとめました。
2つのグループで、明らかに成果は異なりました。個別にアイデアを出した参加者は、最初から4人で集まった参加者よりも多くのアイデアを生み出しました。また、創造的なアイデアの数も2倍以上ありました。
なぜ、一般的なブレインストーミングでは成果がでないのでしょうか。原因として集団心理によって、創造性が妨げられる可能性が考えられます。「質より量」「他人を否定しない」というルールがあるとはいえ、集団で討論をおこなう以上は、他の参加者への忖度が生まれます。
前の人が自分と似たような意見を言った場合、予定していた発言内容を変えてしまうかもしれません。また、前の発言者の意見を真っ向から否定するようなアイデアを思い付いた場合も、言うのがためらわれるでしょう。
集団でブレインストーミングをおこなった場合、最初や最後に提示された意見に強く影響を受ける傾向があることも研究により明らかになっています。
これらの研究結果を踏まえると、何の準備もなく人を集めて「今からブレインストーミングをおこないます。思いついたことは何でも言ってください」というようなやり方では、貴重な時間の無駄遣いに終わるリスクが大きいといえます。
メンバー全員が集まる前に、個別でアイデアを準備させてからグループでの討議に移るという段取りにすると、有益なアイデアが生まれる可能性が高まります。その場で思いついたアイデアではなく、ある程度個人で練られたアイデアを出し合って討議することで、議論の質が高まるでしょう。