世界一流エンジニアの思考法

牛尾剛は1971年大阪府生まれのエンジニア、著作家です。大学卒業後、ITエンジニアとなり、2009年に独立。2015年にはアメリカのマイクロソフト社に入社して、2019年からアメリカ本社でAzure Functionsの開発に従事しています。今回は牛尾剛氏の著書「世界一流エンジニアの思考法」を紹介します。

まず、タイトルにある「世界一流エンジニア」とは、牛尾氏自身のことではありません。冒頭で「私は一流エンジニアではない。ガチの三流だ」と断言しています。本書でいう「一流のエンジニア」というのは、牛尾氏がマイクロソフトで一緒に働いているエンジニアたちのことです。

牛尾氏が言うには、彼らは圧倒的に生産性が高いそうです。一部の優秀な人が突出して頑張っているわけではなく、チーム全員のベーシックな生産性が異様に高いとも言っています。彼らは何が違うのかということが書かれているのですが、今回そのほんの一部を紹介します。

一流のエンジニアほど、知らないことは知らないと素直に質問できるそうです。牛尾氏の職場では、とても優秀な人でも「そんなこと聞く?」と思ってしまうような、初歩的なことを気軽に質問してきます。「全員が気軽に質問することを実践すると、組織全体の効率が相当上がる」と牛尾氏は語ります。

かつて私が在籍していた会社で、同僚が顧客からの質問の回答方針が決められず、上司に質問したことがありました。質問を受けたときの上司の第一声は「それ、本気で聞いてる?」でした。

同僚の経験や能力からすれば、初歩的過ぎる質問だったということなのでしょう。しかし、冗談で初歩的な質問をするような状況ではありません。冗談だったとしたら、何が面白いのかさっぱりわかりません。同僚は「本気で聞いてる?」と言われて「は・・・はい」とためらいながら答えました。上司は「そっかー。これはね・・・」と回答方針を伝えました。

「本気で聞いてる?」というのは、まったく不要な質問です。上司だって、冗談で初歩的な質問をされているとは思っていないでしょう。「おいおい、そんな初歩的な質問するなんて大丈夫か?」という気持ちを表しただけだったと思います。

質問を受けた方がこういったリアクションをしていると、気軽に質問ができなくなります。同僚は「これからは上司に質問することは控えよう」と思ったに違いないでしょう。質問しづらい環境下で働いている人は、わからないことがあってもすぐに質問はしなくなります。自分なりに調べて、何とか自力で解決しようとするでしょう。わかる人に聞けば5分で解決する問題が、自力で調べようとしたばかりに何時間もかかってしまうこともあります。そして、たどり着いた答えが間違っている可能性もあります。後になって間違いを指摘されて直すのであれば、最初からわかる人に聞けばよかったという話です。

自力で解決することを諦めて、問題を放置してしまう人も出てきます。そして問題が放置できないフェーズになって上司に発覚するのです。そんなとき上司はこういうのではないでしょうか。「わからないならなんで質問しなかったんだ!」と。

「質問すること」に関して改めて考えてみたとき「自分の優秀さをアピールしたい」という気持ちで質問する人も少なくないのではないか、ということに気付きました。質問するときに「私はこの件に関してよく理解しているので、このような鋭い質問ができるのです」という思いがあるんじゃないか、ということです。

私自身、質問するときにそういう気持ちをもっていたことを認めざるを得ません。そういう人ほど「しょうもない質問をする人だな」と思われたくない気持ちも強いのではないでしょうか。

思い返すと、私が見てきた優秀な人は、会議の場などで常に鋭い質問をしていました。そして、初歩的な質問や、資料をよく読めばわかるような質問は決してしてきませんでした。一方で、「超優秀な人」の場合は、意外と初歩的な質問もしていました。「今更こんなこと聞くのも申し訳ないんだけど・・・」といった素振りも見せずに、堂々と質問していました。

牛尾氏の本に話題を戻します。気軽に聞ける仕組みは、気軽に断れる空気とセットになっていると牛尾氏は語ります。聞かれるほうも、わかることであれば答えてくれますが、わからないことであれば「あいつに聞いた方がいいと思うよ」とか「わからないな。サポートに聞いたら?」と簡単に言うのです。

日本の文化だと「私を頼って質問してくれたんだから、最後まで面倒を見なければ」というスタンスの人が少なくない気がします。自分よりAさんの方が適切な回答ができるだろうという場合でも「Aさんに聞いてみて」ではなく、自らAさんに質問して、その回答を質問者に伝えるということです。

このスタンスは、誠実さを感じられます。しかし、ドライな見方をすれば、最初に質問を受けた人が間に入る意味があまりないですよね。Aさんに質問を投げる際に、質問内容が質問者の意図から外れてしまうリスクがあります。また、Aさんに質問を投げるのとAさんからの回答を返す際に、タイムラグが生じる可能性があります。質問者が直接Aさんに聞けば、これらのリスクは避けられます。

この本は「世界一流エンジニアの思考法」というタイトルですが、エンジニア以外の職種でも応用できる考え方がたくさんあります。興味がある方はぜひ読んでみてください。

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