異質なものも飽きられる

注目を得るためにはどうすればよいでしょうか。人は相対的に異質なものに注目します。休日の繁華街に、パーカーにジーンズという服装で出かければ周囲に溶け込むでしょう。しかし、同じ格好で平日の朝、霞ヶ関の官庁街を歩けばかなり目立つはずです。

周辺の環境における「標準」から外れているものがあると、人はそれに対して注意を向けます。「普通ではないもの」というのは、自分にとって脅威となる可能性があります。あるいは、非常に魅力的なものである可能性もあります。

ドラマに出てくる刑事は、だいたいスーツを着ていますが、実際の刑事はTPOにふさわしい服装をしています。休日の繁華街を捜査で訪れるならば、スーツは目立ちます。周辺に溶け込むために、カジュアルな服装をします。

以前在籍していた会社は、いわゆる「スタートアップ企業」で、服装自由でした。カジュアルシャツにチノパンくらいの服装がスタンダードで、もっとラフな格好の人も珍しくありませんでした。

そんな環境でも、スーツで出勤している人がたまにいました。大抵は、管理部門に新しく入ってきた、保守的なキャリアを歩んできたベテランです。そういう人は周囲に馴染めず、早めに会社を去っていきました。

「人は異質なものに注目する」という性質を利用して、企業はあの手この手で消費者の注目を引こうとします。ソフトバンクでは「白戸家の人々」というCMシリーズがありました。お父さんが犬だったり、家族の中でお兄ちゃんだけ黒人だったりと、異質なところが多い家族です。狙い通り、このCMは多くの人の注目を集めました。

青森出身のタレント、王林はテレビに出るとき津軽弁で話します。テレビに出ている人は、たいてい標準語を話します。一部関西出身のお笑い芸人は、関西弁を話します。そんな環境で、津軽弁を話す人がいたら、相当目立ちます。王林は整った容姿をしていますが、芸能界のレベルで見れば跳び抜けて綺麗とまでは言えません。津軽弁という異質な特徴がなければ、ここまで売れずに埋もれていたかもしれません。

当初は異質なものとして注目していても、慣れれば注目も薄れていきます。私は学生時代、大学近くに住んでいる友人宅にたびたび遊びに行っていました。線路沿いにあるアパートで、数分おきに電車が通る騒音が聞こえてくるようなところです。最初の頃は、うるさくて気になっていたのですが、数か月もするとまったく気にならなくなりました。

学校や職場などで、普通とは違う恰好をした人、普通とは違う行動をする人が一人や二人いるものです。そういった人を最初に見たときは、かなり強い印象を受けたはずです。しかし、ある程度の期間、同じ空間で過ごしていれば見慣れるものです。

例えば、全員がスーツにネクタイを着用している職場で、Tシャツジーパンの社員がいれば目立ちます。あなたがその職場に配属されたら「なんだあのラフな格好の人は?」と驚くでしょう。しかし、数か月もすればそれが当たり前になって、何とも思わなくなります。

数か月後、その職場に新人が配属されたとき、その新人もまた「なんだあのラフな格好の人は?」と驚くでしょう。そして、あなたを含めた他の社員に対して「なんでみんな当たり前みたいな顔してるんだろう」という疑問を抱くことでしょう。

企業は自社の商品に注目を集めるため、異質性を利用することがあります。しかし、これまで述べてきたように、異質なものも慣れれば注目されなくなります。そのため「一度注目を集めたら終わり」ではなく、常に新しい手法を考え続けなければならないのです。

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