狙い通りの行動へ誘導する選択肢

うな重のメニューで松・竹・梅とあれば、多くの人が竹を選ぶというのはよく知られています。人間は極端なことを避ける傾向があるため、一番高いものと一番安いものを避けて、真ん中のものを選びやすいのです。

メニューを提示するときは三択にして、真ん中に最も選んでほしい選択肢を配置するのがポイントです。単なる二択だと、安い方が選ばれるでしょう。また、選択肢が多すぎると人は選べなくなって、結局何も買わないという結果に終わるリスクが高まります。

ある雑誌が、オンラインの定期購読サービスを始めました。最初はふたつの選択肢が設定されていました。仮に、以下のような選択肢だったとしましょう。

1.オンライン版+紙版 月額5,000円
2.オンライン版のみ  月額2,500円

このとき、3分の2の読者が、安いオンライン版のみを選びました。会社としては、オンライン版+紙版を選ばせたい。そこで、マーケティング部門が一計を案じました。読者の選択肢を、以下の3つに増やしたのです。

1.オンライン版+紙版 月額5,000円
2.オンライン版のみ  月額2,500円
3.紙版のみ      月額4,800円

選択肢を3つに増やした結果、多くの人が選択肢1を選ぶようになりました。相変わらず、一番安いのは選択肢2なのですが、なぜ高価格である選択肢1が選ばれるようになったのでしょうか。

選択肢3の「紙版のみ」というのは、選択肢1と比較して非常に劣っているようにみえます。紙版しか読めないのに、オンライン版と紙版のみより200円安いにすぎません。これら3つの選択肢を目の前にしたとき、読者は「1は3よりもずっと魅力的に見える」と考えます。そして、選択肢2の存在を忘れて、1を選んでしまうのです。

友人と休日に行く旅行について相談しているとします。行先は沖縄か北海道に絞られました。ここで、友人がこう言います。「エコノミークラスの飛行機で沖縄か北海道に行くか、あるいは今ならエコノミーとほぼ変わらない料金で、沖縄へのビジネスクラスの席が押さえられるんだけどどうする?」

どうでしょうか。ビジネスクラスで沖縄という選択肢が非常に魅力的に見えてきませんか。もしこれが、「エコノミーで沖縄か、ビジネスクラスで沖縄か」の二択だったら「他の行先も検討してみたい」と考える余地があるでしょう。「エコノミーで沖縄か、エコノミーで北海道か、ビジネスクラスで沖縄か」という三択にすると、他の行先を検討することなく、沖縄が選ばれる確率が高まります。

スマホゲームでは、あえて明らかに劣る選択肢を用意して、ユーザーを課金に誘導するテクニックが使われています。「Homescepes」というスマホゲームは、基本的に無料で遊ぶことができます。課金してアイテムを購入すると、ゲームを有利に進めることができます。

ゲームでライフがなくなくまで失敗すると、通常はライフが回復するまで30分待つ必要があります。課金してアイテムを購入すると、待たずにゲームを続行できます。アイテムのラインナップを一部紹介します。

5,000G          1,200円
5,000G+その他アイテム3点 700円
1,000G  300円
1,000G  100円(セール価格)

単に5,000Gだけ購入するのが1,200円かかるのに対して、5,000Gに追加でアイテムが3点ついているものが700円なのです。どう考えても後者の方がお得です。このようにして、ユーザーは「何も買わない」という選択肢の存在を忘れて700円のパックを購入することになります。

また、1,000Gを購入するのであれば誰でもセール価格の100円を選ぶでしょう。これは、とりあえずアイテムを購入する経験をさせるための作戦です。「ゲームに課金はしない」という主義のユーザーは数多くいます。そんなユーザーに、課金のハードルを越えさせるために、1,000Gを100円のセール価格で提供しているのです。

たった100円でも「課金した」という経験をすることで、次回以降課金のハードルは下がります。そこからさらに高額なアイテム購入をさせるのが狙いです。

あえて明らかに劣る選択肢を用意することで、相手にこちらの意図通りの選択をさせる手法を紹介しました。これは、手の内がわかっていても抗うことが難しいものです。私もこういう記事を書いておきながら、今日もHomescapesで課金してしまいましたから・・・

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