プラシーボの活用法

有効成分を含んでおらず、本来治療効果がない薬のことを偽薬といいます。プラシーボ、プラセボとも呼ばれます。風邪をひいている人に「風邪薬です」といって、単なるラムネの粒を渡して飲ませてみると、症状が改善することがあります。これを「プラシーボ効果」といいます。

プラシーボ効果は、古くから利用されてきました。第二次世界大戦中、医師は薬不足のために患者にプラシーボを投与することがありました。それによって、治癒が認められたケースも多くみられました。

プラシーボは、新薬の治験にも用いられます。治験者を被験薬を投与するグループと、プラシーボを投与するグループに分けて、プラシーボ組よりも治験組の効果の方が明らかに強いときのみ、薬の有効性が認められます。

物理的な薬剤を用いなくても、プラシーボ効果に似たような結果を得られる場合があります。ニューヨーク市では、約3200個ある歩行者用押しボタンのうち2500個がダミーです。押しても押さなくても、信号が変わるタイミングは変わりません。しかし、急いでいる歩行者は押しボタンを押すことで「信号が変わるタイミングを早められた」と考えます。その結果、信号無視をして横断するリスクが下がるのです。

歯磨き粉にはミントやメントールといった、口の中がスーっとする成分が入っています。これらの成分は、直接歯の洗浄効果や殺菌効果があるわけではありません。しかし、私たちは歯磨き後に口の中がスースーする感触を確認して「きれいに磨けたな」と満足します。

かつて、そのようなスースーする成分を配合しない歯磨き粉が販売されたことがあります。スースーしないだけで、歯磨き粉本来の効能は変わりありません。しかし、この歯磨き粉は「全然磨いた気がしない」ということでまったく売れませんでした。

ブランドはそれ自体がプラシーボ効果を持っています。同じ色使い、同じ素材の服でも、有名ブランドの製品というだけで数倍、数十倍の値段がつけられます。目の前にワインを出されて「1本10万円以上する有名な銘柄のワインです」と言われれば「きっと極上のうまさに違いない」と思うでしょう。実際に飲んでみても、プラシーボ効果で「さすがにそこらのワインとは全然違う」という感想をもつのではないでしょうか。

しかし、銘柄を隠してワインをテイスティングさせてみると、高級ワインと1000円以下で売られている安いワインの違いがわからないというのが現実です。銘柄を知っている状態で飲んだ時は、「高級ワイン」というブランドがプラシーボとなって、おいしく感じているのです。

プラシーボ自体には、良いも悪いもありません。ポイントはそれをどう利用するかでしょう。ラムネの粒を飲んで病気が治るのであれば、それに越したことはありません。高級ブランドのロゴが入っていること以外は、量販店で売っているのと変わらない服を来ている人が、それによって満足感や自己肯定感を得られるのであれば、外野がとやかく言う必要はないのです。

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