電車に乗っていて「〇〇線は線路内人立ち入りの影響で遅れが生じています」というアナウンスを聞いたことがないでしょうか。「線路内に人が立ち入ったこと」を「線路内人立ち入り」と名詞化した表現です。
こういった不自然に名詞化された表現は、様々な場面で登場します。コンビニで「温めはどうなさいますか」という店員がたまにいます。ビジネス等の場面で「多くの気付きを得ました」という言い方をする人もいます。
これらを自然な表現に直してみます。
「線路内人立ち入りの影響で」→「線路内に人が立ち入った影響で」
「温めはどうなさいますか」→「温めますか」
「多くの気付きを得ました」→「多くのことに気付きました」
なぜ不自然な名詞化が起こるのでしょうか。名詞化した方が簡潔になるから、ということではないと思います。上の例を見ても、左と右で文字数は大きく変わりません。「温め」の場合は、名詞化した方が文字数が多くなっています。
「和語より漢語の方が丁寧な感じがする」ということが理由になっていると私は考えています。「あの件どうなった?」と言われて「忘れておりました」というと軽い感じがするけど漢語を使って「失念しておりました」というと、かしこまった感じがしないでしょうか。
そこから派生して「動詞を名詞化すると丁寧な感じがする」という認識をもつ人が増えた可能性があります。
カジュアルな会話でも不自然な名詞化表現を耳にする機会が増えました。「どこに住んでるの?」ではなく「どこ住み?」と言ってみたり、「あの子は彼氏がいるよ」ではなく「あの子は彼氏持ちだよ」と言ってみたり。「今何待ち?」という言い方もありますね。
これらは名詞化することによって、表現が軽くなっている気がします。「どこに住んでるの?」だと、ストレートな質問という感じがしますが、「どこ住み?」と聞くと、軽いノリで尋ねている感じがして、聞かれた方も深く考えずに答えやすそうです。
ビジネスや接客などの場では、かしこまった感じを出すために名詞化を使い、カジュアルな場では、くだけた感じを出すために名詞化を使っているーそうだとしたら、論理的には不思議な現象ですね。