前回のブログで、様々な「〇〇ハラスメント」を紹介しました。中には「わざわざハラスメントとして定義する意味があるのか?」「これがハラスメントなのか?」と疑問に思えるものもありました。次々と新たなハラスメントが生まれる現実を目にして、「このままでは何も言えなくなるし、何もできなくなってしまう」と思う人もいるかもしれません。
ここで重要なポイントをお伝えします。それは「ハラスメント自体は問題であるとは限らない」ということです。
ハラスメントそのものが法令に抵触するようなハラスメントがあります。そうではないハラスメントもあります。セクハラは前者に当たります。通称「男女雇用機会均等法」第11条1項は、セクハラの防止を会社に義務付けています。
男女雇用機会均等法第11条1項
(職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等)
第十一条 事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
また、会社に求められるセクハラ防止措置については、厚生労働省が細かく指針を定めています。男女雇用機会均等法は、会社にセクハラが起こらないような環境づくりを求めていますが、セクハラを起こした張本人に対して直接何らかの規制や罰則は設けていません。張本人に関しては、会社等の組織内の規定に基づいて、降格・配置転換・減給・厳重注意等の処分を行うということになります。セクハラ行為が、民法上の不法行為や刑法上の強制わいせつ罪等に該当する場合は、法律に従って損害賠償請求や刑事告訴等の措置が取られることになります。
パワハラに関しても、同様に職場でのパワハラを防止させるための法律が存在します。2019年に成立した改正労働施策総合推進法がそれにあたり、通称「パワハラ防止法」と呼ばれています。
セクハラやパワハラのように、法令やガイドラインが整備されていないハラスメントも多数あります。前回の記事で紹介した過剰に正論を突きつけて相手を追い詰める「ロジカルハラスメント」はそれにあたるでしょう。
部下が作った資料に対して、上司が「この主張は根拠がないので明確な根拠を添えること。この説明は前のページと矛盾しているので修正すること。ここの表の元になっているデータが古いので最新の情報に更新すること。以上を修正して17時までに再提出してください」と言ったとします。あいまいなところのない、明快で論理的な指示です。
もし部下が「上司の対応がロジハラにあたる」と訴えてきたら、会社はどのように対応すればよいでしょうか。上司が言っていることは正論です。それがロジハラにあたるかどうかは、「正論を過剰に突きつけていないか」「相手を追い詰めていないか」ということがポイントになっています。
書かれてあることだけを見れば、過剰には思えないという人が多いでしょう。しかし、部下は過剰だと感じたかもしれません。また、相手を追い詰めているかどうかは、部下の受け止め方次第です。上司が丁寧に伝えたつもりでも、部下は追い詰められていると感じるかもしれません。総合的に考えると、部下の感じ方次第で、今回の上司の対応はロジハラにあたる可能性があります。
上司の対応がロジハラだったとして、直接ロジハラを規制するような法令やガイドラインはありません。会社としては、これがパワハラにあたるかどうか判断したうえで対応する必要があるでしょう。
もし上司が「頑張って作ったね。でもここと、ここと、ここの部分をこういうふうに直したら、もっとよくなると思うんだ」といったやり方で対応すれば、部下もロジハラと受け止めることはないでしょう。しかしこれはもう上司の指導スタイルや、部下との相性などの問題であり、会社が介入するレベルの話ではないと個人的には思います。
結局、法令が整備されていないハラスメントに関しては、会社としては個別に事案を検討し、法令や社内規定に触れていないか判断したうえで個別対応するしかないでしょう。
「お土産ハラスメントだ」とか「エアコンハラスメントだ」とか「エアーハラスメントだ」とか、用語としてネット上では存在しているものの、実際に使っている人はいるんでしょうか。書いていてそんなことが気になりました。