ナヴァル・ラヴィカントはインド出身の起業家であり投資家です。ナヴァルは投資家として、初期段階のツイッター・ウーバー・ポストメイツなどに投資をして大成功を収めています。
ナヴァルは経済的成功を遂げるだけでなく、人生や幸福に関する独自の哲学を発信して、世界中の人々に影響を与えています。そんなナヴァルの語録を集めた本が「シリコンバレー最重要思想家 ナヴァル・ラヴィカント」(エリック・ジョーゲンソン著)です。
この本では「経済的自由を得るためには事業の一部を所有する必要がある」という考え方が紹介されています。時間を切り売りしていたのでは、経済的自由を得られるほどに稼ぐことはできないということです。
睡眠時間を1日3時間まで削って、毎日20時間コンビニで働いてもリッチにはなれません。弁護士や医者であれば、コンビニ店員よりは時給が高くなりますが、それでも経済的自由を得るには至りません。経済的自由を得るためには、自分が何もしていなくてもお金を生み出す事業を所有する必要があるのです。ここでいう「事業」とは、企業を経営することだけでなく、金融商品・不動産など不労所得を生み出す資産も含みます。
この本の第1部「富」は、こうした「どうやって富を得るか」といった話が中心です。第2部「幸福」では「どうやって心に平安をもたらすか」「どうやって最高の人生を歩むか」といった哲学寄りの話が中心になります。
第2部で心に引っかかったフレーズは「人間が一番犯しがちな間違いは、『外的環境に何かが起こったら幸福になれる』と信じることだと思う」というところです。これは多くの人が心当たりがあるのではないでしょうか。
私も「〇〇を手に入れれば人生が一変するかもしれない」と思い続け、実際に手に入れた後でそれが幻想だったことを思い知るという経験を何度もしてきました。「〇〇」の部分にはパソコン、スマホ、服、靴といったワードが入ります。
ガラケーを使っていたときは「スマホを買ったら、これまでパソコンでやっていたことの多くをスマホでできるようになる。処理スピードも大きく向上する。結果として、生活の質が劇的に変わる!」と思っていました。
実際に買ってみると、「まあ、便利だけど人生が変わるほどじゃないわな」と冷めてしまいました。なんなら、販売店で店員と契約に関する話をしている段階で「こんな大金を支払う価値があるものだったっけ?」という気持ちを抱いてしまいました。
ネットショッピングでも似たようなことが起こります。サイトでほしいものを比較検討しているときはワクワクしているものの、送料が無料になるために追加で買うものを探しているときにはもはや作業と化しています。購入ボタンを押したときが幸福のピークで、届くころには「そういえばそんなものを頼んでたな」くらいのテンションになっています。
ナヴァルは「欲望とは、『欲しいものを手に入れるまで不幸でいます』という契約を自分自身と交わすことだ」と語っています。さらに、「欲しいものを手に入れたところで幸せになるわけではない」という事実もセットでついてきます。
このことを自覚している人は非常に少ないのですが、自覚したところでどうにもならないのが悲しいところです。「あの店で見かけたあの素敵な服を買わないからといって、自分がそのことで不幸になるわけではない。買ったところで幸せになるわけではない」。そう自分に言い聞かせたとしても、ふとした瞬間にその素敵な服を着て颯爽と歩いている自分を想像してしまうのが、人の性というものなのです。