グルメ漫画とコンプライアンス

『酒のほそ道』という約30年連載が続いているグルメ漫画があります。主人公である岩間宗達は営業マンで大の酒好きです。宗達が仲間と飲みに行ったり、独り酒を楽しんだりするエピソードが中心です。

この宗達、一部ではその人間性に疑問を呈する声もあります。酒の席で酒や肴に関する蘊蓄を垂れるシーンが多いのですが、それで場の空気が悪くなってしまうこともしばしば。また、会計後店のすぐ外で「割り勘の計算がおかしい」と騒いで店の人に注意されることもありました。これから人気の店で酒を飲みに行くという場面では「入ったときタッチの差で満席だったら悔しい」ということで、車にひかれそうになりながら道路を横断するシーンもありました。

こういった部分だけを見ると、知らない人は「なんでこんなクズと酒を飲みに行く人がいるんだ?」と思うかもしれません。一時は連載誌を毎週買っていた私も、ときどきそう思います。

そんな宗達のクズエピソードの中でも最もやばいのが「宗達流サイクリング」という回です。この回で宗達は、休日の朝7時から店をはしごして酒を飲みます。その際、どの店でもアルコールとつまみを1品頼むというルールを自分に課しています。

まずはファミレスでサラダとビールを飲み食いして移動。2軒目は牛丼屋で牛皿と酒、3軒目は喫茶店でピザトーストとビール・・・という調子で合計10軒の店で飲み食いして最後の店を出たときには夜7時。この時点で10杯飲んでいる宗達はもうフラフラです。

休日に何をしようが勝手なのですが、ひとつ問題なのは宗達の移動手段が自転車ということです。飲酒運転は法律で禁じられていて、自転車も例外ではありません。当時の編集は「この描写はまずいですよ」と思わなかったのでしょうか。

実は作者のラズウェル細木も、自転車で飲酒運転をしていて、それを対談で語っています。酔っぱらって自転車に乗って事故を起こした結果、10日ほど入院、仕事は1か月半ほど休んでしまったそうです。

本人も「酔っぱらって自転車に乗っちゃいけないんだな」っていう、反省と教訓を噛み締める日々です」と語っているので、良くないという自覚はあるのでしょう。

飲酒運転が今ほど厳しくない時代の対談かと思いきや、この対談は2022年3月10日に公開されたものでした。ごく最近ではないですか!先の事故はずっと前の話のようですが、この話をネットで公開すること自体やめたほうがいいというのが現代の感覚ではないでしょうか。

『酒のほそ道』に限らず、ラズウェル細木の作品は結構好きで読んでいます。『う』という作品は、うなぎがテーマです。うなぎ限定のグルメ漫画で、4巻完結。それでも読ませる力があります。そういう力がある漫画家だからこそ、コンプライアンスに関してはアップデートしてほしいと願わずにはいられません。

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