いつの間にか問題を別の問題に置き換えてしまう問題

人間はなるべく楽をしようとする性質があります。難しい問題に直面したとき、それについて真剣に考えるのではなく、別の簡単な問題に置き換えて対応する場合があるのです。

歯が痛くて歯医者を探すとき、あなたは「この歯医者に通えば、適切な歯の治療を受けられるか?」という難しい問題に直面することになります。この問題に対する最適解を見つけるためには、院長や所属歯科医師の経歴・腕前、患者の口コミ、院内の設備など、様々なファクターを検証する必要があります。これらのファクターの中には、一般人では実情を把握することが非常に難しいものも含まれています。

そこであなたは別の簡単な問いを立ててみます。「この歯医者のホームページは見やすくて整ったつくりになっているか?」「広告に載っている院長や歯科医師には自信ありげで賢そうに見えるか?」「広告に載っている事務スタッフの見た目に好感が持てるか?」

これらの質問の答えがすべてYESだったとしても、その歯医者があなたの求めるクオリティを備えている保証はありません。しかし、人は往々にしてこういった簡単な質問をもって、本来の難しい問題の答えを導き出します。「ホームページのレイアウトはいい感じだし、スタッフ写真ではみんな素敵でさわやかに写っているからきっと腕もいいのだろう」というように。

歯医者側もそのことはよくわかっているので、ホームページ作成にはしっかりお金をかけていいものを作ります。歯科医師が研究に力を入れて腕を磨くより、ホームページを改良するほうが売上には直結するでしょう。

企業が投資家に投資を呼び掛けるときは、事業計画書の作成に力を入れます。その企業が本当に投資する価値があるかどうかを見極めるのは、非常に時間がかかる作業です。社長や幹部と面談をし、現場をじっくり見学し、製品やサービスを実際に利用してみる必要があります。

多くの投資家は、そこまでの労力を割くことができないため、別の質問によって投資の是非を判断します。「事業計画書の作りが洗練されていて、『なんかすごそう』と思わせるものか?」「社長のプレゼンはうまくできているか?」

本来、事業計画書で大事なのは中身です。また、社長のプレゼン能力と企業の成長性は必ずしも相関関係があるとは限りません。しかし、文字だけワードにベタ打ちの資料を社長が淡々と読み上げるだけのプレゼンでは、たとえ中身が素晴らしいものだったとしても、投資家の興味を惹くことは困難なのです。

「あなたは自分の人生に満足していますか?」「あなたは今の仕事に満足していますか?」こういった質問は「あなたの今の気分はどうですか?」という質問に置き換えられます。大きな仕事を片付けて、1杯目のビールを飲みほしたときであれば「人生最高!」と答えるでしょう。また、些細なことで怒られてむしゃくしゃしているときであれば「人生いいことなんてないよ」と答えるかもしれません。

あなたが人生の重大な決断に直面しているとき、いつの間にか別の質問について考えてしまっていないか注意する必要があります。「今の仕事を続けるか、転職するか」という質問の答えを考えるときは、自分のキャリアプラン・ライフプラン・家族の生活など、関連する重要なファクターを洗い出して、検証したうえで総合的に判断すべきです。くれぐれも「今日の上司のあの発言は許せるか?」といった別の質問に基づいて判断しないことです。

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