シカゴ大学の研究者ジョージ・ウーは、900万人以上のマラソンランナーの完走タイムを調べました。その結果、タイムにある特徴がみられました。1時間ごとの区切り直前の1分間で、完走者が大幅に増加していたのです。具体的にいうと、2時間59分、3時間59分、4時間59分といった、n時間がn+1時間になる直前の時間帯に完走するランナーが集中していました。
ゴール直前で疲れ果てたランナーが、「〇時間を切った」という記録のために最後の力を振り絞っていることがわかります。2時間59分で完走したランナーと、3時間で完走したランナーは、ほぼ同じ走力であるといえるでしょう。しかし、多くの人にとって、前者と後者ではまったく価値が異なります。
人は誰でも節目が好きなのです。夜、家路の途中でふと万歩計アプリを見たら9000歩。まっすぐ家に帰ったら9500歩くらいになりそう。そうなったら、1万歩にするために少し遠回りしてみようと思いませんか。
節目効果を利用して、利益を最大化しようとする企業も少なくありません。店で買い物するごとにスタンプをもらえるカードは、あなたが他の店に浮気するのを防ぐツールです。今スタンプが16個たまっていて、20個になったら1000円割引の特典が得られるとしたら、残り4つのスタンプをもらうために来店頻度が上がるかもしれません。
スマホゲームでは、継続して遊んでもらうために節目効果を利用しています。以前私がやっていたスマホパズルゲームには、様々な指標がありました。パズルをクリアするごとに上がっていくレベル。パズルやイベントをクリアするともらえるポイント。ポイントを使って進めていくタスク。いろいろな場面でもらえるアイテム。これらすべてが節目を作ります。
レベルが95の状態であれば、レベル100になるまでゲームを進めたくなります。レベルが100になると、ポイントが48までたまりました。そうなると、50ポイントたまるまで進めようと考えます。50ポイントになると今度は、イベントがもう少しで完成しそうです。そうなると、イベントが完成するまでゲームを進めたくなります。そうこうしているとレベルが190になって・・・
このような具合で、時間差波状攻撃で節目が襲ってくるわけです。多くのプレイヤーは、この攻撃に屈してダラダラとゲームを続け、有利に進めるために課金にも手を出したくなります。私も一時このゲームにはまりすぎて時間を無駄にしました。1日1時間まで、といった制限を設けたりもしましたが、自分で作った制限で何か罰則があるわけでもないので簡単に破ってしまいました。
運営側は人間心理を知り尽くしたうえでゲームを作っていますから、普通の人間が自分の意思で抗うことは難しいでしょう。私の場合は、ゲームアプリが存在するからやってしまうんだということで、あるときアプリを削除しました。削除してからは一度も再インストールすることなく、そのゲームはやっていません。
節目効果をうまく利用すると、節目を目指して普段より努力する、といった効果が得られるかもしれません。同時に、節目効果を使ってあなたから時間やお金を搾取しようとする人や組織もいることを頭の片隅に留めておくとよいでしょう。