フィードバックをほしがる私たち

スポーツクラブに通う人の目的は様々です。多くの人が「痩せたい」「筋肉をつけたい」「体力をつけたい」といった目的をもってスポーツクラブに入会しますが、成果はすぐに出てくるものではありません。

自分の体を鏡で見て、はっきりと成果を感じられるようになるまでには通常数か月かかります。それまでは、「頑張っているんだけど効果があるのかよくわからない」という状態が続きます。そのまま継続すれば効果が現れるのに、効果が見えてこない状況に耐えられずに通うのをやめる人もいるでしょう。

このようなとき、すぐに目に見える反応を確認できれば継続するモチベーションになるでしょう。一例として、筋トレした後の筋肉痛が挙げられます。筋肉痛を感じることで、「まだ体に変化はないけど着実に効いてるんだ」という実感を得られます。人は自分の行動に対して、早めのフィードバックを求める性質があります。

歯磨き粉で歯を磨いた後のスースーする感触もフィードバックのひとつです。昔の歯磨き粉にはスーっとするミントの風味がつけられていませんでした。

そんな中、アメリカの歯磨き粉ブランド「ペプソデント」がミント風味の歯磨き粉を世界で初めて発売しました。ペプソデントで歯を磨いた後は、口の中にミントのスーッとした感触が残ります。これが歯磨き後のフィードバックとして、使用者に「歯がきれいになっている」という実感をもたらしました。ミント自体には歯の汚れを落としたり、歯を健康に保つ効果はありません。それでも当時の人々は、ミント入りのペプソデントを好んで使うようになりました。

ボタンやキーボードを押したときの「手応え」もフィードバックの一種です。あの手応えがあるから、「ちゃんと押せたな」という実感を得られます。エレベーターの操作はボタンで行うものと相場が決まっていますが、かつてタッチパネルで操作するエレベーターが開発されたことがあります。階数などが凹凸のあるボタンになっているのではなく、スマホやタブレットのような平面上に表示されているのを想像してみてください。

タッチパネル式のエレベーターはまったく普及しませんでした。実際、そういうエレベーターを見たことがある人は少ないでしょう。フィードバックがないことが普及しなかった原因であると考えられます。

ボタンの場合は、押した指に物理的な手応えが残ります。しかしタッチパネルの場合、手応えがありません。タッチパネルで押した階が光っても、手応えがないので押した人は物足りなく思えたり、不安になったりするのです。

「手応え」の観点で考えると、タッチパネルで操作するスマホやタブレットは物足りないかもしれません。ガラケーは物理ボタンですから手応えを感じられます。エレベーターの場合は、数字をタッチしてオンにするだけですが、スマホの場合はタッチして対象物を動かしたり消したりできるため、フィードバックが足りないと感じさせにくいのかもしれません。

それでもやはり物理的な手応えがほしいというニーズは根強いようです。一部のスマホには「触覚フィードバック」という機能が備わっています。タッチパネルを操作するとき、かすかな振動を発生させることによって物理的なフィードバックを得られるようになる機能です。テクノロジーの発達によって物理ボタンがなくなったのに、疑似物理ボタンのような機能を付けなければならないというのは面白い現象ですね。

コメントを残す