今回は西原理恵子の著書『できるかな V3」を紹介します。西原理恵子は1964年高知県生まれで、主な著書に『まあじゃんほうろうき』『鳥頭紀行』などがあり、『ぼくんち』では文藝春秋漫画賞を受賞、『毎日かあさん』は数々の賞を受賞し、アニメ化・映画化もされました。
西原氏は作中で大胆な表現、下品な表現をよく使います。この『できるかな』シリーズもたいがいです。中身は西原氏が登山、気球、キャバレーのホステスなどに実際にチャレンジするというものです。V3の「脱税編」が飛び抜けてやばいです。
西原氏が「税務署がきたあ」と焦りまくっている場面から話はスタートします。当時、西原氏の会社の売上は2千万円でした。おそらく原稿料や印税がメインだと思われます。それに対してかかった経費は画材費用3万2千円。西原氏は画材費の「¥32,000」という数字に0をひとつ書き加えます。すると、専務兼会計係の西原氏の母がさらに0をひとつ追加して「¥32,00000」としてしまいます。さらに西原氏は、実際にはひとりで作品を描いていたのですが常時30名以上のアシスタントがいることにして、経費として計上していました。
税務署もアホではないのでこんな愚策はすぐに見破られます。アシスタントの住所とされるところについて税務署員が調べたところ、そんな人間住んでいない、そんな名前のアパートないという始末。悪質と判断され、過去5年に遡って延滞税等も加算されて、西原氏は税務署から「1億円払え」と言われます。
西原氏は「誰が払うかそんな金」ということで、担当税理士と相談してどうにか納税を逃れようとします。あらためて過去5年分のアシスタントの領収書を提出しますが、「何人かに電話したら『アシスタントなんてやってない』って言ってますよ」と税務署員に問い詰められます。
普通はこれで観念するのですが、西原氏は「実は私、漫画描けないんです」と突然の告白をします。「この領収書を書いてくれた人はみんな私のゴーストライター。だから実名は出せないの」と無茶苦茶な話をするのです。当然税務署員は「そんな話通りませんよ!」と反論しますが、西原氏は「うちはこうなんです」の一点張り。
その他にも様々な策を弄して、常識では通るはずのない経費を通そうとします。こういったやりとりを経てしばらくして、税務署から驚きの提案が出てきます。「わかりました。引き下がりましょう。5千万円でそうですか」。
この作品を読むまで、私は税務署は絶対に折れないと思っていました。払わせると決めた金は差し押さえしてでも払わせる。しかしそんな私の常識が覆されました。この間、西原氏はまともな証拠は一切提出していません。誰が見ても無理のある主張をし続けただけです。それなのに、1億円が半分の5千万円になる。こんなことがあっていいのでしょうか。
しかし西原氏は5千万円も払う気はありませんでした。さらにごね続けて、税務署員から「ぶっちゃけた話、いくらなら払うおつもりですか」と聞かれて西原氏が答えた金額は・・・。本来払うべき未納金1億円が、ごね続けてそこまで下がるのかと驚きました。
全部が全部本当の話というわけではなく、一部はフィクションや誇張も含まれているでしょう。そうだとしても、やっていることは無茶苦茶です。コンプライアンスが厳しい今の時代だったら、大炎上しているかもしれません。というか、この本が出た20年前当時でもアウトだと思います。こんな作品が発禁にならずに今でも入手できるということは、日本において表現の自由は守られている証拠かもしれません。