大手教科書会社である東京書籍が発行した高校地図の教科書に大量の訂正があったというニュースがありました。東京書籍が発行した「新高等地図」全192ページにおいて、約1200か所の訂正があったというのです。
その内訳は、誤記や位置の誤りが約50か所、索引と地図とで地名の表記が異なるものなどが約600か所、都市などの掲載場所を示す索引のページや記号が誤っていたものが約400か所ということです。地名の誤記の一例を示すと、南米の「ドレーク海峡」が「マゼラン海峡」とされていたそうです。
それにしても不思議なミスです。東京書籍といえば教科書会社の老舗であり、いわゆる地図帳を作るにしても完全にゼロから作るわけではないでしょう。前のバージョンなどをベースに制作すると思われます。ドレーク海峡もマゼラン海峡も、昔からある地名であり、最近新しくできたわけではありません。それなのになぜドレーク海峡とすべき場所に、マゼラン海峡と記載してしまったのか、謎は深まるばかりです。
教科書検定を管轄している文部科学省の担当者は「検定結果が不適切だったとの認識はない。最終的に網羅的な校正は教科書会社の責任で行われるものだと考えている」とコメントしています。
確かに教科書検定の主旨は、教科書の内容が公正・中立であり、バランスが取れたものとなっているかを審査することにあり、誤記・誤字等のチェック(いわゆる校正)をするものではありません。
とはいえ、約200ページの中に1200か所も誤りがあるものを見ておきながら、スルーしてしまったのは問題ありと言わざるを得ません。それだけの誤りがある書籍であれば、校正が目的でないとしても呼んでいる途中で「随分誤りが多いな」と気付くのではないでしょうか。検定担当者はその分野の専門家ですからなおさらです。
検定というのは形だけで、チェックが不十分な状態で世に出ていたのかもしれません。また、教科書会社の校正・最終チェック担当者も「いつもやっていることだから」ということで右から左でOKを出していたのでしょう。
このように、最後の砦であるはずの審査部門がその機能を果たさないと、大きな問題に発展してしまいます。1986年に起きたスペースシャトル・チャレンジャー号の爆発事故も、審査部門に問題がありました。チャレンジャー号は打ち上げから73秒後に大爆発を起こしました。機体はフロリダ州沖の大西洋上で空中分解を起こし、乗組員7名は全員死亡しました。
調査の結果、ブースターの密閉用ゴム製リングに問題があることが判明しました。このゴムリングは水素漏れを防ぐためのものでした。チャレンジャー号に搭載されていたゴムリングは、気温20℃以上の環境では特に問題は起きないのですが、20℃を下回ると硬貨してガス漏れを起こす可能性がありました。
現地のフロリダでは気温が20℃を下回ることがしばしばありました。にもかかわらず、なぜこのゴムリングが採用されたのでしょうか。審査記録を見ると、設計者やNASAの職員等合計16名の専門家が承認のサインをしていました。
審査関係者に聞き取りをした結果、「ゴムリングを設計したエンジニアがゴムの専門家だったので安心して承認した」と全員が回答しました。
審査や検定は、ミスや事故を防ぐ砦になります。しかし、チャレンジャー号の例のように審査が形だけになってしまったら意味がありません。審査に関わる人間は、自分が最後の砦だと思って真剣にチェックする必要があるのです。