「チェックリスト」とは業務の手順や詳細を可視化し、項目ごとにチェックできるようにしたリストを意味します。チェックリストは目新しいものではありません。昔から業務ツールとして使われてきました。では、チェックリストの効果はどれほどのものなのでしょうか。
チェックリストの効果を示す例として、医療界での事例を紹介します。集中治療室の患者は、しばしば静脈ラインを挿入されます。ここでいうラインとは、血管から点滴や輸血のための道のことで、そのために針やチューブなどが挿入されます。ライン経由で感染症が起こると、重大な合併症が引き起こされるリスクがあります。この「ライン感染」を解決するために、ジョンズ・ホプキンス病院の医師プロノヴォストはチェックリストを導入しました。
チェックリストは全部で5つの項目からできていました。「ライン挿入の前に手を洗う」「ライン挿入時に消毒液で患者の肌を消毒する」といった内容です。5項目すべてがごく基本的な内容で、反論の余地がないものでした。当初は、「こんな当たり前のことだけ書いたリストで事態が改善するのか」という疑問を持つ関係者もいました。
ところが、その成果は目覚ましいものでした。ミシガン州の集中治療室でこのチェックリストを導入したところ、ライン感染がほとんど発生しなくなりました。これにより、約1500名の命が救われ、病院は1.7億ドルのコストを削減できたと推定されています。
集中治療室の医師はチェックリストの内容を実践する必要があることを全員理解しています。しかし、あるときは慣れから、あるときは疲れから、あるときは焦りから、必要な手順を飛ばしてしまうことがあるのです。チェックリストを見ることで、頭から抜け落ちていた手順を思い出して正しい方法をとることができます。
チェックリストは繰り返しおこなわれる業務で使うと効果的です。チェックリストの効果を最大限に発揮させるためには、いくつかコツがあります。
チェックリストを形骸化させないというのは重要なポイントです。とりあえずチェックリストを作ってみたものの、使わない人が増え始め、最終的には誰も使わなくなったというのはよくある話です。
まず導入時に、責任者がチェックリストを使う意義をしっかり説明することです。また、最初のチェックリストを使わずに作業をしていたら厳しく注意して、本気で導入しようとしていることを理解させる必要もあるでしょう。
導入前と導入後を比較して、「処理速度が上がった」「ミスが減った」といった定量的な効果を示すのも有効です。効果があるということがわかれば、使用者がチェックリストを使い続けるモチベーションになります。
もうひとつの重要なポイントは、適宜更新するということです。チェックリストの導入後に、「こうしたほうがいいんじゃないか」といった意見は出てくるものです。そうした意見を検討して、必要と認められればすぐにリストを更新しましょう。
「チェックリストのうち2項目は、手順が変わったため無視していい。あと、リストにはないんだけど『xxxxする』というのも必要なので書き加えておいて」。こういった運用をしている組織がありますが、これではチェックリストの意味がありません。運用が変わったらすぐにチェックリストを更新して差し替えましょう。そうすることで、使用者は改めてチェックリストの重要性を認識することもできます。
日常的におこなっている業務で、もっと効率を上げたい、ミスを減らしたいと思っているものはないでしょうか。そんなとき、チェックリストを導入すると業務の質を向上させられるかもしれません。