子どもの頃から散歩が好きで、気の向くまま知らない町まで出かけたりしていました。「もうこの辺でいいだろう」と思ったところで自宅に向かうのですが、行きと同じ道だとつまらないので違うルートで帰ります。
当時はナビなどなかったので、時々出てくる行先表示やランドマークを頼りに帰ります。「今この辺にいるだろう」と思っていたら、全然違うところでしかも自宅とは違う方向に進んでいた、ということもよくありました。軌道修正しながら、行きよりもだいぶ時間をかけて帰宅していたものです。このように苦労して進んだ道は、あとになってもよく覚えていました。
ナビがないころは、まわりの景色などから自分の現在位置を推測し、頭の中の地図に当てはめながら運転していました。ナビを使うと、そこまで頭を使う必要がありません。ポイントでナビを見て進めば間違いなく目的地に着きます。そうした便利さと引き換えに、道を覚えにくくなったような気がします。
ふと疑問や気になることがあったとき、昔ならそれについて考えこむことがありました。例えば、「あれってどうやって作ってるんだろう」とか「あの芸能人、なんて名前だっけ」など。今は、スマホを使えばすぐに答えがわかります。
すぐ情報を手に入れられるようになった代わりに、知識が定着しなくなったような気がします。芸能人の名前が思い出せないとき、「あの人ではない、この人でもない」とあれこれ考えた結果ふと思い出せたときは、当分その名前を覚えていられます。考えつくして、どうしてもわからなくて後で答えがわかったときも、「ああ、そうだった!」という強い感情の動きがあるのでずっと覚えていられます。一方で疑問に思ってからすぐに調べた場合、簡単に忘れてしまうような気がします。
国語や数学の記述問題、ビジネスのケーススタディなどの複雑な問題を考えるときは、この傾向がより顕著になります。「A社が成功した要因を、下記のデータをもとに説明せよ」といったケーススタディに取り組むときは、頭の中で考えるだけでは意味がありません。考えたことをまとめて、自分なりの解答を書き出す必要があります。
頭の中で考えただけですぐに模範解答を見てしまうと、「まあ自分の考えとだいたい同じだな」「じっくり考えればこの答えにはたどり着けたな」と思うものです。その結果、なんとなくわかったつもりで終わって、問題から学ぶ機会を失ってしまいます。
自分の頭で考え抜いて解答を書き出して、模範解答を見てみましょう。文字として書いておけば、模範解答との違いが明確になります。自分の解答と模範解答を比べて、「この視点が抜けていたな」とか「この部分は模範解答と同じだな」といった振り返りによって、成長することができます。
知識や知恵を簡単に手に入れると定着しづらく、苦労して手に入れれば長く定着するということがいえるのではないでしょうか。