セルフ・ハンディキャッピングの実践的な使い方

学生時代、テストの当日に「いかに自分が準備不足であるか」をアピールする人を見たことがあるでしょう。あるいは、あなた自身がそういうことをしていたかもしれません。

「全然勉強してない。テストやばい」とか、ときには「4時に起きて勉強しようと思って寝たんだけど起きたら8時!」「勉強の前に30分だけゲームしようと思ったんだけど気付いたら3時間経ってた!」など、より具体性のあるエピソードを交えてテスト勉強ができなかったことをアピールしてきます。

このように、あらかじめハンディキャップがあるかのような行動や主張をすることを「セルフ・ハンディキャッピング」といいます。

セルフ・ハンディキャッピングは、失敗するかもしれないことを正当化するために、前もって言い訳を用意するための行為です。例えば、テストの前の日に夜更かしをすると。よい成績が取れなかったときに「本当はもっといい点が取れるはずだったけど、前日の勉強時間が足りなかった」と言い訳することができます。よい成績が取れれば「準備不足でもいい成績が取れた」ということになります。

セルフ・ハンディキャッピングは、主に自分の自尊心を高めたり、責任回避をするために使われます。大事なテストや試合や商談などの前にあえて関係ないことに時間を潰してしまうのは、他人にアピールするためというより自分のためなのです。

他人へのアピールのためのセルフ・ハンディキャッピングであれば、本当は準備万端なのに「全然準備できてない」ということもできます。ただ、それでは自分のためのセルフ・ハンディキャッピングにはなりません。準備不足であると公言するだけでなく、本当に準備不足の状態を作らないと自分のためのセルフ・ハンディキャッピングとして機能しないのです。

自分としては100%の準備ができたにもかかわらず、結果がふるわなかったら、それは自分の能力不足ということになります。それを認めるのはとてもつらいことです。そのような事態を避けるために、実際に準備不足の状況を作るというわけです。

セルフ・ハンディキャッピングには様々な手法があります。例えば「試合前の練習時間を減らす」「試験勉強の時間を減らす」「目標への熱意を下げる」「対戦相手が有利になるようにする」「結果への期待を下げる」など。

メルボルン大学のコーデリア・ファインは、セルフ・ハンディキャッピングに関するある実験をおこないました。テストに関して強い不安を抱く学生を集めて知能検査を受けさせます。前半と後半の間の休憩時間に、「試験にどれくらい不安を感じるか」「どれくらい準備をしたか」という質問をしました。

実は、この調査の直前に一部の学生には「これから受けるテストは、点数が不安に影響されないという特徴がある。つまり、受験者がどれだけ緊張していても、受験者の知能を正確に計測できる」という説明をしていました。この説明を受けていた学生をグループA、説明を聞いていない学生をグループBとしましょう。

「試験にどれくらい不安を感じるか」という質問に関して、グループBの学生は「強く不安を感じる」と答えました。ところが、「不安はテストの成績に影響を及ぼさない」と知らされたグループAの学生は、不安を強く訴えませんでした。不安を言い訳にできるかどうかによって、不安の感じ方が変わってしまうことがわかります。ただし、グループAの学生は「試験の準備が足りなかった」と答えました。不安を言い訳にできないと知って、準備不足を言い訳に利用したというわけです。

セルフ・ハンディキャッピングは、客観的にみると失敗の確率を高めるだけのまったく不合理な行為に見えます。しかし、セルフ・ハンディキャッピングをまったく使わなければ、感情がダメージを受けてしまいます。ある程度準備はしつつ、セルフ・ハンディキャッピングを利用するのが現実的な方法ではないでしょうか。

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