組織において何か重要なことを決める場合、たいてい会議が開かれます。利害関係者がもれなく集められた会議で物事を決めれば、平等な感じがするし後で不平不満も出にくいでしょう。しかし、会議で妥当な結論を出すのは簡単なことではありません。
ある研究によると、集団において1~2名が主導権を握るとその集団は視点や意見が抑圧されることがわかっています。集団のメンバーは、少数の主流派の意見に無条件に賛同するようになります。
被験者を何人かに分けて議論をさせる実験によると、4人組の場合4人中上位2人の発言がすべての発言の62%を占めていました。6人組の場合、上位3人で70%となりました。集団が大きくなるほど、一部の主導権を握っている人たちの支配傾向が強まるのです。
では、支配されている層はどのようなことを考えているのでしょうか。例えば、「AとBどちらがよいか」について議論していて、主導権を握っているメンバーはAを推しているとします。このとき、支配されている層は「Bのほうがいいんだけどな」と思っていても、「Bがいいと言っても却下されるだろう」と思って口をつぐんでしまいます。
また、主導グループが言及していない事実や論点に気付いても、「このことは主導グループも当然知っていて、あえて触れてないのだろう」と思って話題に出すのを遠慮します。このようにして、会議では主導グループの意見に賛同する話や、主導グループの主張をサポートする話以外はしにくい雰囲気になります。
「ロンドンの地下鉄の総延長距離は?」こうした多くの人が検討がつかないような質問を投げかけられたとき、人は多様な数字を答えます。ある人は100km、ある人は200km、ある人は1000㎞・・・。ただし、これは回答者がバラバラに答えた場合の話です。
回答者がひとつの部屋に集められて、順番に答えさせると結果はまったく異なるものになります。最初の回答者が100kmと答えた場合、次の回答者は80kmとか120kmなど、前の答えと近い数字を答えます。「1000km」といった前の答えとかけ離れた答えは出てきません。
このように、他人と同じような答えを出すのはそれが正しいと思うからではありません。全然違う答えを言って「和を乱す人だな」と思われたくないからなのです。
ちなみに和を乱す人だと思われたくないという現象は、駅でも見られます。駅のホームで、「2列で(あるいは3列で)お並びください」という案内があり、地面にも複数列で並ぶように線が引かれていても、一列で行列が伸びていることがよくあります。
最初に並んだ人の横に並ばないで、後ろに並ぶ人が3人ほど続けばもうそのエリアで2列並び、3列並びが実現することは困難です。駅の管理者が複数列で並べと言っていて、スペース活用の観点から考えてもその方が効率的なのに、不合理な一列並びを打破できないのです。
あなたは、その光景を見て「効率悪いな」と思うかもしれません。しかし、10人が一列に並んでいる状況で、11人目にならずに先頭の人の隣に並べるでしょうか(ちなみに私には無理です)。
会議でも同様のことが起こります。「本当はBのほうがいいと思うんだけどな」「Aに決めるなら〇〇のリスクを検討しないといけないけど誰も触れてないな」といったことを思う人が半分以上いたとしても、雰囲気に流されてAで決まることが往々にしてあります。この決定は、みんなが集まった会議で決められたことなので後で異論を言うこともできません。
こういった会議の罠に陥らないようにするために、主導権を握る側は「異論・反論大歓迎。気になったことはどんどん発言しよう」という雰囲気を作る必要があります。あらかじめ主流派の意見とは違う意見を言うようなサクラを仕込んでおいて、主流派以外が発言しやすいようにするのも手です。
主流派以外が活発に意見することによって、新たな視点やリスクに気付いてより質の高い結論に到達できる可能性が高まります。