外観はアドリブのように見えても、実際には台本があるというのはよくあることです。例えば、国会での質疑応答はぶっつけ本番ではありません。質問者は事前に内容を役所に伝えて、対応方針を官僚と管轄の大臣が協議したうえで原稿を用意して本番に臨みます。
これをヤラセだといって批判するのは適切ではありません。国会で質問に答えるというのは、街角インタビューでサラリーマンが個人の感想を述べるのとは次元が違います。各種法律、社会情勢、過去の経緯など様々な観点から検討したうえで、責任ある回答をする必要があります。国会での質問にアドリブで的確に答えるのはどんな優秀な議員でも不可能でしょう。そのために、事前の質問通告と回答内容の打ち合わせがあるのです。
もし事前通告なしで質問をするようになると、ほとんどの回答が「即答はできないので検討のうえでお答えします」となり、実質的な議論ができなくなってしまいます。
大臣も官僚の作文をただ読むだけではありません。官僚が書いてきた草案を見ながら議論をおこない、修正を経て最終的な答弁書を完成させます。
国会での乱闘も台本があるようです。だいぶ前のことになりますが、元衆議院議員の杉村太蔵氏が暴露していました。与党がある法案を提出して、野党はそれに反対しているとします。与野党は協議をするわけですが、それでもどうしても妥協点が見つからないときに、「乱闘」という戦略がとられる場合があります。
野党がどれだけ反対の声を挙げても、数の論理で法案が通ってしまう。しかしすんなり可決してしまうと、野党の面目が潰れてしまうし支持者からは批判を浴びてしまいます。そこで、「強行採決反対!」とか言いながら暴れまわるわけです。
野党は乱闘することによって「体を張って採決を阻止しようとした」ということで体面を保つことができます(これで保てているのかは疑問ですが)。与党は「数の力で押し切った」という悪い印象を持たれてしまう代わりに、法案を通すことができます。乱闘をすることで、野党は名を取り、与党は実を取ることができるというわけです。
杉村氏によると、「この日時に、この場所で乱闘します」ということがマスコミに通告されます。各社マスコミのカメラが構えている中、議員たちはシナリオ通りに乱闘を進めます。「〇〇議員がここでマイクを奪う」「〇〇議員がガードをする」など、かなり細かいところまで台本が定められているそうです。ある程度やって、いい映像が撮れたら「ではこのあたりで」とアナウンスが流れて乱闘は終了となります。お開きとなった後は、与野党の議員たちは「お疲れさま」「ちょっとやり過ぎたかな?」などと言いながら解散となるそうです。
これは10年以上前の話で、今も行われているのかはわかりません。今の時代だと誰かがSNSにアップして大荒れになりそうですね。