「方(かた)」という敬語表現があります。「外国の人」「帰る人」「関係者」これらは、特定の人、あるいは集団を表しています。これに「かた」を付けると「外国のかた」「お帰りのかた」「関係者のかた」となり、対象となる人・集団に敬意を表すことができます。
「方(かた)」はその漢字の通り、方角・場所を意味しています。古語で「北の方(きたのかた)」という言葉があります。正殿の北の方角に住むことが多かったことから、公卿や大名など身分が高い人の妻を敬っていう表現です。
敬う表現ですから、身内には使いません。「父はとても厳格なかたでした」という表現は身内を敬っていて、奇妙に聞こえます。「父はとても厳格でした」「父はとても厳格な人でした」でよいのです。
また、敬うのが不適当な人に対しても使いません。「サングラスをかけて帽子を深くかぶった不審なかたがレジまでやってきて、『金を出せ』と言ってきました」。ニュースでこういうインタビューを聞いたら違和感を覚えるでしょう。こういった人にわざわざ「かた」を付ける必要はないのです。
「高齢者のかた」「障害者のかた」といった表現をよく耳にします。「かた」抜きで、「高齢者が~」「障害者は~」だと言い方がきついと感じる人も多いのではないでしょうか。一方で、「若者は~」「健常者が~」だとどうでしょう。こちらはあえて「かた」を付けなくても問題ないと感じないでしょうか。
「高齢者のかた」というとき、「弱者だから『かた』を付けないと失礼だ」という意識が働いているのではないでしょうか。弱者とみなされる相手には「かた」を付けて、非弱者や勝ち組には「かた」は不要とされる傾向がある気がします。
【「かた」付きで呼ばれがち】
高齢者→高齢者のかた
障害者→障害者のかた
ホームレス→ホームレスのかた
被害者→被害者のかた
患者→患者のかた
【「かた」なしでOKとされがち】
若者←若者のかた
健常者←健常者のかた
国会議員←国会議員のかた
経営陣←経営陣のかた
億万長者←億万長者のかた
「かた」を付ける相手に対して差別意識をもっていて、それを覆い隠すために「かた」を付けている、というのは考えすぎでしょうか。