アメリカの人類学者、ジョセフ・ヘンリックは人類の知能が発達した原因が消化器官の変化にあるのではないかと考察しています。これだけ聞いてもあまりピンとこないと思うので、詳しく説明しましょう。
原始時代、現代人の祖先は火を利用することを知り、その知識は世代を超えて受け継がれていきました。その結果として、人類の体にある変化が生じました。生肉ではなくて火を通した食材を食べるようになった人類は、大きな消化器官が必要なくなりました。
食材に火を通すと、生で食べるより消化しやすくなります。また、雑菌も火によって消毒されますので、消化や解毒のために多くのエネルギーを割かなくてもよくなりました。その分、脳の成長のためにエネルギーを回せるようになりました。また、火を通すことによって、より簡単に咀嚼できるようになったため大きな口や強力なあごも不要になりました。
つまり、火を使うことによってこれまで体内で行われていた消化作業をアウトソーシングできたということです。そのおかげで余ったリソースを、知能の発達に回すことができたとヘンリックは主張します。
「人類の知能が発達したおかげで、火を活用できるようになった」のではなく、「火を活用できるようになったおかげで、人類の知能が発達できた」というのがヘンリックの考えです。一般的に考えられる因果関係とは逆の着眼点なのが興味深いですね。