2022FAFAワールドカップにおいて、日本が2勝1敗でグループリーグを突破しました。グループリーグ最終戦でスペインに勝ったときは日本中が歓喜しました。しかしスペイン戦の前、コスタリカ戦で敗れたときは監督や選手に対して多くの批判が飛び交いました。そんな中、西武やロッテで活躍した元プロ野球選手で野球解説者のG.G佐藤氏は、Twitterで「日本代表の誇りを胸に戦っている選手に戦犯という言葉を使わないであげて」と投稿しました。
「戦犯」とは「戦争犯罪人。戦争を起こしたり、戦争で人道に外れた行為をしたりして罪に問われた人」というのが元々の意味です。今では「試合などでチームが負ける原因となった人」という意味で使われるようになり、多くの辞書にそちらの意味も掲載されています。
私もG.G佐藤氏と同じ意見で、「負けた原因となった人」という意味で戦犯ということばを使うべきではないと考えています。元々は「負けの原因となった人」という意味ではないというのがひとつめの理由です。もうひとつの理由として、元々の意味が強すぎて、負けの原因となった人に対して使うのはきつすぎるということです。いくら世界大会とはいっても、試合で負けにつながるミスをしたくらいで、「戦争犯罪人」という意味で使われたレッテルを貼られるのは割に合わないでしょう。このような物騒な単語がカジュアルに使われるようになったのは、使い勝手がいいというのが理由だと思います。
「セレブ」ということばの語源は「celebrity」という英単語です。clebrityは「有名人、名士」という意味であり、金持ちかどうかは関係ありません。ところが日本では、有名ではないお金持ちをセレブと呼んだりします。これもセレブということばの使い勝手がいいからです。
たとえば、六本木ヒルズに住んでいる年収数億円の開業医がいるとします。この人を単に「金持ち」と呼ぶのは物足りない気がしませんか。「金持ち」だけだと、都会でいいところに住んで洗練された生活を送っているというニュアンスが伝わってきません。ここに「セレブ」という呼称を当てはめるとしっくりきます。長々と説明しなくても「セレブ」という3文字でどういう人なのかイメージを共有できるのです。
「勝利をもたらした人」という意味を表す単語は「MVP」「立役者」などがあります。「この試合のMVPは〇〇だ」とか「ワールドカップ大躍進の立役者は〇〇だ」といった使い方ができます。一方で、「クロアチア戦の(負けた原因となった人)は〇〇だ」という文でカッコの部分を端的に表せる短い単語はありませんでした。そこで、本来の意味は違うけど「戦犯」という単語を当てはめてみるとしっくりきたため、広く使われるようになったということです。
とはいえ、「戦犯」というのは悪い意味で強いワードなので、他に適切なものがあればそちらを使いたいところです。例えば、「逆MVP」「逆立役者」などはどうでしょうか。プロ野球の日本シリーズでは、シリーズで大活躍した選手を「シリーズ男」、絶不調の選手を「逆シリーズ男」と呼んだりします。一部マスコミでは普通に使われています。同じノリで、割と真面目に「逆MVP」「逆立役者」を推奨したいと思います。
あんまりしっくりこないという人もいるかもしれませんが、結局は慣れの問題です。サッカーでいえば「自殺点」という表現はよくないということで「オウンゴール」という表現に変わったことがあります。最初は「自殺点は自殺点だろ」と思っても、みんなが「オウンゴール」の方を使えば慣れていくんです。