今回は年齢と記憶力の関係についてお話します。年齢を重ねると記憶力が衰えるという考えは事実なのでしょうか。社会に出てから資格試験や仕事のために勉強をしたときに「10代のころと比べて覚えが悪くなった」と実感した人は多いとおもいます。しかし、タフツ大学でおこなわれた実験によると、加齢で記憶力が衰えるわけではないことがわかっています。
年齢を重ねると物覚えが悪くなると誤解される原因のひとつが「思い込み」です。タフツ大学の実験では、20歳前後の若者グループと60代から70代の年配者グループを参加者として集めました。参加者には単語リストを見せて、その後に別の単語リストを見せて最初のリストにあった単語を答えさせました。
テストの前に一部の参加者は「これは心理テストです」と伝えられました。残りの参加者は「このテストは高齢者の方が成績が悪い」と伝えられました。「心理テスト」と伝えられた組は、若者・年配者ともに正答率は約50%でほぼ差はありませんでした。「高齢者の成績が悪い」と伝えられた組は、若者の正答率は約50%で変わりありませんでしたが、年配者の正答率は約30%に落ち込みました。この実験結果からわかるように、年を重ねても記憶力が悪くなるわけではありません。「自分はもう若くないから覚えが悪い」という思い込みによって、記憶力が悪くなるのです。
年齢を重ねると物覚えが悪くなると誤解されるふたつめの原因は、環境の違いです。10代の受験生は勉強さえしていればいい環境にあります。学校、塾、自宅などで勉強だけしていれば、食事や住むところは保護者が世話してくれます。一方で、社会に出れば勉強だけしていればいいというわけにはいきません。会社に勤めながら資格試験の勉強をしているとしましょう。彼/彼女は勉強している間も、本業のことや家族のことや生活のことがちらついて集中できないかもしれません。他のことに気を取られた状態で勉強していたら、定着率が悪くなるのは当然です。要するに、年齢を重ねると、多くの人が勉強だけに集中できる環境ではなくなってしまい、その結果として勉強してもなかなか定着しないというわけです。
そして、年齢を重ねると物覚えが悪くなると誤解される最大の原因は、勉強時間の違いです。現役受験生は毎日学校で50分×5~6コマの授業を受けます。これだけで4~5時間の勉強時間になります。それに加えて塾・予備校・自習などで勉強します。社会人になるとここまでの勉強時間を確保するのは困難です。仕事と睡眠・食事などの時間以外をすべて勉強に費やせば受験生並みの勉強時間になると思いますが、それを継続するのは相当の体力と精神力が必要でしょう。実際には毎日数時間勉強するだけでも大変だと思います。受験生時代の半分くらいしか勉強時間が確保できなければ、当然定着度合いも低くなります。
要するに、年齢を重ねること自体は記憶力が衰える原因ではなく、思い込み・環境の変化・勉強時間の減少が主な原因であるということです。これらの原因への対策を考えてみましょう。まず、勉強時間を増やすために一日を振り返ってみましょう。意外と何もせずにぼーっとしている時間や、これといった目的もなくスマホをいじっている時間があるものです。そういった時間を勉強時間にあてるとよいでしょう。ただし、生活に最低限必要な余暇の時間や睡眠時間を削るのは、長期的によくない影響が出そうなのでおすすめしません。
また、「年を取ると記憶力が悪くなる」という思い込みを取り払いましょう。さらに、集中できる環境作りも大切です。自宅で勉強しているとどうしても集中力を阻害する要因がたくさんありますから、図書館や自習室など勉強する場所を変えるのも有効です。図書館の場合、本を閲覧する人のために自習に制限がある場合がありますので、そこのルールに従いましょう。そのような工夫を凝らせば、年齢を重ねても記憶力をキープして、資格試験や仕事関連の勉強もうまくいくのではないでしょうか。