国会議員になりすますなどして、外務省・厚労省・警視庁に出入りしていたとされる男が、建造物侵入の疑いで逮捕されたというニュースがありました。その手口は、スーツ姿にニセの議員バッジを付けて、国会議員を装うというものです。警視庁に潜り込んだときは、議員バッジも付けずに庁舎の入口を素通りし、IDカードでしか開かない国際犯罪対策課も、他の警察官の後ろにくっついて入っていったそうです。
逮捕された男は22歳。22歳の若者が議員バッジを付けていて、警備員は不審に思って止めなかったのでしょうか。今は皆マスクをしていますから、顔や年齢がよくわからないということもあったかもしれません。また、侵入時は堂々としていたことが予想されます。あまりおどおどした様子だと呼び止められる可能性が高くなります。私だったら滅茶苦茶挙動不審になってしまう自信があります。被疑者がやったのは悪いことですが、そのクソ度胸だけはほめたいと思います。惜しむらくはそれをまっとうな方向に使わなかったことでしょう。
このニュースを聞くと、セキュリティの在り方について考えさえられます。首都東京の治安を守る総本山である警視庁丸の内庁舎がこんな一般人に簡単に入れてしまうのかと。しかも被疑者は侵入時に捜査員用の腕章も盗み出していたのです。「警察大丈夫ですか?」と心配になってしまいます。これを防ぐには、「顔パスはやめて、入館時に必ず通行証・IDなどを提示させる」ということを徹底させる必要があるでしょう。
私もいろいろなビルの入館セキュリティを見聞きしています。あるビルでは、警備員にIDを見せるシステムで、かなり厳格にチェックしていました。IDをしっかりと見せないと、「すみません、よく見せてください」と必ず呼び止められます。毎日顔を合わせていて覚えている相手でもIDを忘れた場合は通してくれません。IDを忘れた人のために定められた手続きをして、確認が終わらない限り中に入れないのです。「毎日会ってて社員だとわかるのに融通がきかないな!」と不満に思う人もいましたが、今になって思えばそうやって不審者が入り込むのを防いでくれていたのです。
社員以外の来訪者への対応も、セキュリティ上重要です。セキュリティを高めたいのであれば、来訪者の社名・個人名・訪問先などを書かせるだけでなく、確認も必要でしょう。名簿に記入すれば確認なしで通してもらえるビルもありますが、それではセキュリティが弱いと言わざるを得ません。訪問者予定リストで名前を確認したり、訪問先の担当者に確認したりした後で通せば、不審者が侵入するリスクを低減できます。
この確認作業のために来訪者の待ち時間が増えるというデメリットはあるかもしれません。これに関しては、ITを活用して手続きを簡略化することができるでしょう。例えば、タッチパネルに、訪問者・社名・訪問先などの情報とあらかじめ伝えられた番号を入力すると、自動で一時入館証が発行されるといったシステムが考えられます。
芸能人のよくあるエピソードとして「番組出演のためにテレビ局に行ったら警備員にスタッフパスの提示を求められた。私もまだまだですねトホホ」みたいな話を聞くことがあります。実際のテレビ局のセキュリティがどうなっているかはわかりませんが、この話だけで判断すれば、有名人は顔パスで入れるのかもしれません。
しかし、一部有力者は顔パスといった例外措置をとっていると、その隙をつかれて不審者の侵入を許してしまうリスクが高まります。もし顔パスがありだった場合、「私だ」みたいな感じで堂々と入ろうとする人がいたときに、警備員が「この人パス持ってないから止めようかな・・・でもすごく堂々としてるから、止めてはいけない大物かもしれない・・・」と思って声掛けをためらってしまう場合が出てくるでしょう。
「パスがない人は誰であっても通してはならない」というポリシーが徹底されていれば、上記のようなリスクを防げます。いちいちパスを出したくない思っている有力者にとっては面倒かもしれませんが、パス提示を徹底すれば、その有力者も不審者の脅威から守られることになるのです。