1999年、テキサスA&M大学で痛ましい事故が発生しました。年に一度開催されるアメリカンフットボールの試合の前夜祭で、高く積み上げられた材木を燃やす恒例のイベント(ボンファイヤー)がありました。その高さはビル5階分ほどになります。この材木が完成直前に倒壊し、27人が負傷、12人が死亡するという大事故になりました。
ボンファイヤーは約90年の歴史がありましたが、このような事故はそれが初めてでした。ではなぜここまでの事故が発生してしまったのでしょうか。その後の事故調査によって、事故が発生しないための前提条件に関して思い違いがあったことがわかりました。
この年は、材木の形状や組み立て方法が変更されていました。新しい方法を使うと、例年よりも火がよく燃えて、しかも長持ちするのです。ただし、材木は水平な地面に設置する必要がありました。地面に少しでも傾斜があったら材木が倒壊する可能性があります。
組み立ての関係者はみな地面がたいらであることを信じ切っていました。そのため、誰も土地の傾斜を実際に確認しなかったのです。関係者の間では、「地面が傾いていたら倒壊のリスクがある→この地面はたいらである→ツリーは倒壊しない」という論理が成立していました。ところが、「この地面はたいらである」という前提を疑わず確認しなかったため、ツリーは崩れてしまったというわけです。誰かがその前提を疑って、組み立てる前に地面を測量していればこの事故を防ぐことができたかもしれません。
重要な意思決定をするときには、結論に至るまでの前提条件をもれなく検証する必要があります。「AだからB→BだからC→CだからD→よってEすべきである」ーこのような提案を受けるとき、ぼんやりしていると何となく筋が通っていてよさそう、と思えるかもしれません。しかし、前提条件をひとつずつ詳細に検証すると、腑に落ちない箇所が出てくることがあります。「Eすべきである」という結論ありきで、そこに至るために都合のよい論理を組み立てている場合があるのです。そのような可能性も考えて、前提条件をうのみにしないようにしましょう。