ある会社が業績目標を達成した従業員に10万円の臨時ボーナスを与えることにしました。臨時ボーナスを提示するメッセージの候補が3つあります。
(1)10万円あれば電化製品をいいものに買い替えられます。普段はできない贅沢な食事も楽しめるでしょう。
(2)預金口座に10万円が入れば安心感が増すでしょう。
(3)10万円の臨時ボーナスはあなたが会社にとって重要な存在であることを示す証です。
あなたはどのメッセージに惹かれますか。(3)ではないでしょうか。(1)や(2)は現実的、下世話な感じがします。では、自分以外の社員のモチベーションを上げるのはどのメッセージだと思いますか。この質問をすると、最も多い回答は(1)になるのです。2番目は(2)です。
「自分は金やモノのために働くわけではない。臨時ボーナスは自分の業績に対する評価なのだ。自分以外の人は金やモノを動機付けにして働いてると思うけどね」といったところでしょうか。実際には他人も同じことを考えているのです。
私に関していうと、新しいプロジェクトを任されたのですが、なかなかうまくいかず苦労していた時期があります。そのとき当時の上司が「今月の目標を達成したらメンバー全員に焼肉をおごろう」と言ってきました。上司としては、なんとかメンバーを発奮させようと思ったのでしょうが、私は逆にモチベーションが下がってしまいました。
私がそのプロジェクトに打ち込んでいるのは、プロジェクトを成功させるためです。成功させれば昇給・昇進があるかもしれませんが、あくまでそれは仕事についてくる結果であって、それ自体を目標にしているわけではありません。唐突に上司から焼肉を提示された瞬間、自分たちの頑張りの価値が一晩で消費されてなくなる焼肉程度の価値しかないのかと落胆してしまいました
もし焼肉をおごるとしたら、目標達成したあとに「よし、焼肉でもいくか。今日はおごりだ」というやり方がよかったのではないかと思います。ゴール後に提示された褒美であれば、純粋な慰労として受け止めることができます。ゴールする前に褒美を提示されると、「これくらいの褒美があれば目の色変えて頑張るだろ」と思われているようで、かえってモチベーションダウンにつながる場合があります。
もしあなたが他人のモチベーションを上げたいのであれば、ここまでの話を念頭に置いて作戦を考えた方がいいでしょう。「あの人は金を稼ぐ手段として仕事をしている」と思われるより、「あの人は自尊心や使命感に基づいて仕事をしている」と思われたいですよね。誰でもそうです。人はときどき「誰でもそうです」という部分を忘れてしまいがちです。「自分はその方法でモチベーションアップするか」というチェックを怠らなければ、そんなに的外れなことにはならないでしょう。