見かけと実際は同じなのか

「見かけは実際に等しい」という考え方があります。この考えに基づくと、犬のように見える生き物がいたらそれは犬です。犬のように見える生き物がワンワンと鳴いていたら、もう確実に犬です。この考え方は人間や他の生物の本能に組み込まれています。

森の中に木の実のようなものが落ちていたら、それは木の実であり食べられます。ヘビのような生き物が這っていたらそれはヘビであり、逃げなければ危険が及びます。このように、「見かけは実際に等しい」という考えに従えば、おおむねいい結果につながります。

多くの生き物は、ハチが危険な生物であると認識しています。ハナアブというハエの仲間の一種は、黄色と黒の縞模様をもっています。また、ハチのようにブンブンと飛ぶことができます。「見かけは実際に等しい」という考えに基づけば、ハチのような模様をしていてハチのようにブンブン飛ぶ生き物は、ハチであると判断できます。ハナアブはハチのような毒針を持っていませんが、「見かけは実際に等しい」理論を利用して捕食者を警戒させることができます。

現代社会においては、「見かけは実際に等しい」という理論が通用しない場面も多くなっています。ヤクザのような見た目で実は普通の会社員という人もいれば、どうみても地方公務員といった風貌で実はゴリゴリの犯罪者という人だっています。最近では医者がワクチンを打つふりをして、生理食塩水を打って業務委託料をだましとったという事件もありました。医者が「ワクチンを打ちます」といって注射器を持っていれば、中身はワクチンだと思うでしょう。

このように大昔とは環境が変わっても、「見かけは実際に等しい」という考えは簡単に払拭できるものではありません。ある実験では、被験者が犬のふんの形をしたキャンディを食べるように依頼されました。被験者はそれがキャンディであることを知っています。しかし「犬のふんの形をしたものは犬のふんである」という考えによって、被験者はそのキャンディを食べることを嫌がりました。

また別の実験では、被験者に空の容器を選んで砂糖を詰めさせました。その後「シアン化ナトリウム、毒」と書いたラベルを貼らせました。被験者はその砂糖を使おうとしませんでした。自分で作業していますから、中身は砂糖であるということを被験者は認識しているはずです。被験者は、自分たちの嫌悪感が根拠のないものであることはわかっているにもかかわらず、その気持ちを覆すことができなかったようです。

見かけですぐに判断してしまうのは、本能的なものなのでそれ自体をストップさせることは難しいでしょう。見かけで「魅力的だ」とか「嫌悪感がある」と判断した後で、「本当に見かけと中身が一致しているのか?」という疑問をもち、いったん立ち止まって吟味してみることも大切なのではないでしょうか。

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