好き嫌いを決める要素

スクリーン上に短い時間漢字が表示され、被験者が漢字を見た直後にその漢字が好きかどうか評価してもらうという実験がミシガン大学で行われました。漢字に馴染みがある人は被験者から除外されましたので、被験者にとって表示された漢字の意味はわかりません。つまり、複数の直線や曲線で構成された、被験者にとっては無意味な模様を見て好きか嫌いか決めるという実験です。

この実験において、被験者には伝えられていなかったことがあります。漢字が表示される前に一瞬だけ、別の画像が現れます。画像の内容は笑顔だったり、不機嫌な顔だったり、意味をもたなり図形だったりします。これらの別画像が表示される時間は非常に短いため、被験者の記憶には残りません。しかし、被験者の判断には大きく影響があったようです。

笑顔が表示された後に現れる漢字は、被験者が「好き」と判断する割合が高くなりました。また、不機嫌な顔の後に出る漢字は「嫌い」と判断される傾向がありました。被験者に好き嫌いの判断の根拠を尋ねたところ、「その漢字の形が美しいと感じたから」「その漢字が好きなだけ」といった回答が返ってきました。「直前の画像に影響されたから」と答えた被験者はいませんでした。

この実験には続きがあります。上記の手順で被験者をテストした後、直前に表示される画像が入れ替えられました。例えば、直前に笑顔が出た漢字であれば2回目の実験では不機嫌な顔に変更されました。直前の画像が不機嫌な顔であれば、笑顔に変更されました。

2回目の実験では、被験者は直前の画像に影響されることはありませんでした。1回目に被験者が「好き」と判断した漢字は、2回目では直前に不機嫌な顔が表示されても1回目と同じく「好き」と判断されました。逆もまた然りです。

この実験結果をまとめてみましょう。まず、人が最初に出会ったものに対して好き嫌いの判断をするときは、偶然の要素に左右されやすいということです。ある人と初めて会うとき、その前にうれしいことがあったり、楽しいことを見聞きしたりすると、その初対面の人に対して好感を抱く可能性が高くなるでしょう。一方で、朝出かける前に家族とケンカをしたり、移動中に嫌な出来事があったりしたら、初対面の人にマイナスの印象を持つ可能性が高まります。あなたは、好き嫌いの判断が直前の出来事に影響されているとは気付かないでしょう。

また、この実験から「一度好き嫌いの判断がおりた人・物・事象に関しては容易に評価が覆されることはない」ということもわかります。私たちがいつも行っている店や食べているもの、身に着けているものなどに関して、なぜそれを選んでいるか明確に説明できない場合も多いのではないでしょうか。

私たちが数多くの選択肢からひとつを選ぶとき、たいていは偶然の要素に左右されています。選択するタイミングや環境が変わっていれば別のものを選んでいたかもしれません。しかし、ひとたび判断が下されたら、それなりの理由がなければ今後も同じ選択をすることでしょう。

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