日本において、メッセージアプリはLINE一強です。2022年4月段階で国内のLINEユーザー数は9000万人以上だそうです。メッセージアプリを使えない人、使わない人も一定数いることを考えると、メッセージアプリ利用者はほぼLINEを使っているといってもいいでしょう。なぜ多くの人がLINEを使っているかというと、みんなが使っているからです。
製品やサービスの価値が、利用者数・利用率に依存していることを「ネットワーク外部性」といいます。メッセージアプリはネットワーク外部性が働くサービスです。利用者数が少ないメッセージアプリを使っても、他にやっている人が少ないので役に立ちません。利用者が10人しかいないアプリでは、その10人としか交流できません。LINEを使えば、国内9000万人とつながることが可能です。
シェアトップのアプリはその地位が盤石になり、2位以下は付け入る隙がなくなります。ネットワーク外部性が強く働くサービスは、圧倒的1位と弱者たちという構図ができる傾向があります。
こういったサービスでは、スタートダッシュが大切です。最初の段階であらゆる努力を尽くしてトップを取れば、2位以下が逆転するのは難しくなります。典型的な例が「VHS対ベータの争い」です。
家庭用ビデオが出始めたころは、様々な規格が乱立していましたが、最終的には日本ビクターのVHSとソニーのベータマックスの争いとなりました。熾烈な戦いの末、1980年代前半にはVHSの勝利という認識が広がりました。1988年にはベータのお膝元であるソニーもVHSの併売に踏み切りました。事実上のベータ敗北宣言です。
消費者にとっては、規格が複数あるのは不便です。VHSとベータ、両方ビデオを揃えるのは大変ですから、扱っているソフトが多い方だけ買いたいでしょう。ソフトを販売する側も、両方の規格で製品をリリースするのはコストがかかるため、シェアが多いほうだけにしたいでしょう。ということで、いったんVHS有利の情勢になれば、シェアは一気にVHSに集中します。VHSはみんなが使っているからますます繫栄し、ベータは使っている人が少ないからますます誰も使わなくなります。
ネットワーク外部性が働くサービスにおいて、2位以下はどうやって1位に対抗すればよいのでしょうか。1位と同じ土俵で戦っても勝ち目はありません。1位にはない特色を打ち出して、差別化をするのがよいでしょう。
パソコンのOSシェアトップはwindowsです。2021年12月時点でwindowsは9割程度のシェアを占めています。たいていのパソコンアプリはwindowsに対応しているし、使い慣れている人が多いし、何かトラブルがあった場合もwindowsパソコンであれば対応方法がネット上にたくさん掲載されています。
OS2位のMacは1割程度のシェアですが、ベータのように消滅はしないでしょう。Macはwindowsにはない特色を持っているからです。Macには「洗練されている」「おしゃれ」「デザイン性が高い」というイメージがあります。そのため、クリエイティブ系の仕事をしている人の間ではMacは高いシェアを誇っています。現時点でMacを使っているユーザーが「全体ではwindowsユーザーが多いから」という理由でwindowsに乗り換える可能は低いでしょう。MacはWindowsと同じ土俵で戦うのではなく、windowsにはない特色を打ち出すことによって、windowsに潰されることなく2位として生き残っています。
もしあなたが新たな事業に参入するのであれば、ネットワーク外部性が働くのかどうか確認しましょう。ネットワーク外部性が働き、かつすでに絶対王者が存在する事業であれば参入を見送ることも検討すべきです。例えば、今から新しいメッセージアプリを開発しても、一定のシェアを獲得することは難しいでしょう。
ネットワーク外部性が働き、かつトップランナーといえるライバルがまだいないような事業であれば、まずはシェア1位を取ることに全力を尽くしましょう。最初に1位を取れば、2位以下は容易に逆転できません。そこでもし1位を取れなかった場合、撤退することもひとつの選択肢です。撤退せずに戦い続けるのであれば、同じ土俵では戦わないようにしましょう。Macのように、1位にはない独自の魅力を打ち出して対抗して、生き残りを図りましょう。