勇気は伝播するもの

「こうした方がいいんじゃないか」とか「これはよくないんじゃないか」と日頃から思っているけど、会議等の場面で問題提起しづらいことってありますよね。このような場面では、ひとりの勇気ある行動が周囲の人たちを奮い立たせてくれます。

社会心理学者のシャーラン・ネメスとシンシア・チレスがある実験をおこないました。被験者は4人でひとつのグループを作ります。4人は20枚のスライドを見せられて、1枚ごとにスライドの色を答えます。1回目の実験では、20枚のスライドはすべて青色です。4人全員が20回スライドの色を聞かれて、20回とも「青」と答えます(これを実験1-1とします)。

2回目の実験で、被験者は1回目とは別の3人と組んでグループを作ります。この3人は実験者が仕込んだサクラです。1枚目に表示されるスライドの色は赤です。誰が見ても赤です。しかし、被験者以外の3人は「オレンジ」と答えます。被験者は3人が「オレンジ」と答えるのを聞いた後、スライドの色を答えます。これをスライド20枚分繰り返します。被験者以外の3人は、すべてのスライドについて「オレンジ」と答えて、その後で被験者も色を答えます。2回目の実験で被験者は20枚中平均14枚を「オレンジ」と答えました。スライドの色はどう見ても赤なのに、他の3人に流されてオレンジと答えてしまったのです(これを実験1-2とします)。

次に、実験の条件を変えてみます。1回目の実験で、3人は一般の被験者、ひとりはサクラの4人組を作ります。青いスライドが表示されるのですが、サクラは「緑」と答えます。ほかの3人は戸惑いつつも「青」と答えます(これを2-1とします)。

2回目の実験では、1人の被験者と3人のサクラで4人組を作ります。3人のサクラは赤いスライドを見て「オレンジ」と答えます。被験者はどのように答えるでしょうか。サクラにつられて「オレンジ」と答えたのは平均3枚のみでした。被験者は平均17枚、「赤」と答えたのです(これを実験2-2とします)。

なぜこのような違いが生まれたのでしょうか。実験1-1と実験2-1の違いがポイントです。実験2-1では、他の3人が青と答えてもサクラは緑と答え続けました。被験者は、たとえ間違っていても自分の意見を貫き通す場面を目撃したわけです。そのことによって、被験者も他の意見に左右されずに、自分の考えを主張しようと決意したと考えられます。

この実験によって、少数意見でもはっきりと声を上げる人がいると、周囲の人も自分の意見を主張しようという勇気をもらえることがわかります。ひとりが勇気をもって発言することによって、「自分も発言していい」「少数意見でもいい」というメッセージが周囲に伝わるのです。

公民権運動などの歴史的な運動も、最初は少数の人たちの勇気ある行動から始まりました。それが次々と周囲に広まって、数万人を巻き込む運動へと発展していきました。そこまでの規模でなくても、あなたが勇気をもって行動することによって、他の人も勇気づけられて輪に加わるかもしれません。

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