終わりよければすべて良し?

あなたは、60秒間ビンタされ続けるのと90秒間ビンタされ続けるのと、どちらを選びますか。どちらか1つを選べと言われたら、普通は60秒の方を選ぶでしょう。しかし、条件を工夫することによって、90秒の方を選ばせることが可能になります。

ダニエル・カーネマンがおこなった実験の話です。被験者には14℃の冷水が入ったバケツに60秒間両手を入れてもらいます。14℃の水は、多くの人にとってかなり冷たく感じます。そこに60秒間手を浸すのはそれなりの苦行です。

次に被験者は同じように14℃の水に手を入れます。時間は60秒から90秒に延びます。ただし、最後の30秒は水温が15℃に上がります。水温が1℃上がっただけですが、被験者の苦痛は大きく和らぎます。ちなみに、研究者は手を入れている時間を正確に測っていますが、被験者にはその時間は知らされません。

2種類の実験の後に、被験者に「最初の実験(14℃の水に60秒)か、2回目の実験(14℃の水に60秒、そののち15℃の水に30秒)、どちらかを繰り返します。どちらか選んでください」と質問します。69%の被験者は、2回目の実験を選びました。2回目の実験の方が水に手を入れている時間、すなわち苦痛が続く時間が長いはずなのに、そちらの方が好まれるという結果になったのです。

この結果は、心理学の用語「ピークエンドの法則」で説明することができます。ピークエンドの法則によると、ある経験を人が評価するとき、その長さが無視されることがよく起こります。また、ピークとされる「最高の瞬間」や「最悪の瞬間」、あるいはその出来事の最後は重要な評価要素になります。

先程の実験においては、60秒と90秒という長さの違いは無視されて評価の対象になっていません。1回目と2回目の実験で、最悪の瞬間はいずれも実験開始から60秒後付近ですが、最後が違っています。1回目では、最悪の瞬間を迎えた状態で実験が終了しています。一方2回目では、苦痛が和らいだ状況で実験が終了しています。2回目の実験を選んだ被験者は、苦痛が和らいだ最後の30秒を重視したのです。

ピークエンドの法則は、日常生活や仕事でも応用できます。例えば誰かと電話していて「じゃ、そういうことでよろしく」「うん。じゃあね(ブチッ)」。こんな感じで急に電話を切られると、それまで楽しい会話をしていた記憶も吹っ飛んで嫌な気分になりますよね。そうならないように、電話や面会、会食等においては良い印象をもたせて別れましょう。

飲食店・小売店・ホテル等のビジネスでは、サービスに対する顧客の印象が重要です。ライバルから抜きんでるためには、これまで経験したことのないような最高の体験を提供する必要があります。

靴などの通販大手ザッポスでは、カスタマーサービスを重視していて、これまで数多くの逸話を生み出してきました。ある顧客が旅行中にお気に入りの靴を忘れてしまい、ザッポスで同じ靴を買おうとしました。しかしその靴は品切れでした。普通の通販なら話はそこでおしまいなのですが、ザッポスは違いました。ザッポスの社員は、近くの靴屋に片っ端から連絡をして、顧客が求めている靴を探し、社員が自ら購入して顧客のホテルまで届けたのです。その顧客にとっては忘れられない体験になったことでしょう。

もちろん、この取引単体で考えれば大赤字でしょう。しかし、こうやって顧客に最高の体験を提供することで、企業の評判が上がって最終的に利益につながるとザッポスは考えているのです。

・最後の瞬間に気を配る
・相手にとって最高の瞬間を作る

このふたつを意識してみましょう。

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