山口県でネット詐欺によって40代男性が230万円をだまし取られるという事件がありました。テレビ山口のニュース記事を引用します。
「携帯料金の未払いがある」などという、うその電話で、岩国市の40代の男性が230万円をだまし取られました。
警察によりますと、今月12日、岩国市の40代の男性の携帯電話に携帯会社を名乗るメールがありました。
男性が表示された番号に電話すると、「未納料金がある」と電子マネーを購入するよう言われたということです。
男性は3回にわたって80万円分を買ってカード番号を教え、だまし取られました。
その4日後にも「サイバー保険に入らないと警察に家宅捜索される」という電話で、指示された住所に現金150万円を送っていて、合わせて230万円をだまし取られました。
元記事 「未納料金がある」 岩国・40代男性うそ電話詐欺で230万円被害
このニュースは腑に落ちない点が多すぎます。携帯会社を名乗るメールに「未払いがある」と書かれていても、多くの人は表示されている電話番号に電話したりしません。電話したとしても、「未納料金があるので電子マネーを購入してください」と言われた時点でおかしいと気付くでしょう。「サイバー保険に入らないと警察に家宅捜索される」という脅し文句についてはもはや意味不明です。サイバー保険料金なのか、名目はわかりませんが現金150万円というのも異常に高すぎます。「自分ならこんな詐欺に引っかからない」と思う人が多いでしょう。しかし、現実に引っかかる人が後を絶たないのです。
アメリカ、イリノイ州のとある学区のIT責任者ドン・リンゲレスタインは、ネットを使った詐欺を防ぐためにITセキュリティ会社に無料体験を申し込みました。リンゲレスタインは、最初のテストとして学区の職員宛てに怪しいアドレスからメールを送りました。内容は「セキュリティ問題が発生した恐れがあるため、リンクをクリックしてパスワードを変更してください」というものでした。
リンゲレスタインは、それまで職員に対して「怪しいリンクはクリックしないように」など、詐欺メールへの警戒を定期的に呼び掛けていました。しかし、結果として約3割の職員がメールに記載したリンクをクリックしました。
リンゲレスタインは、職員をテストするために他にもいくつか詐欺メールを送ってみました。「高速道路EZパスが未払いです。お支払いはこちらをクリック」というメールは、クリック率が27%でした。ちなみに、イリノイ州の通行料金支払いシステムの名称は「EZパス」ではなく「Iパス」なのです。27%の職員は、それすら気付かずにリンクをクリックしてしまったのです。学校職員はITの専門家ではないものの、アメリカ国民の平均よりは高いITリテラシーを持っていると思われます。それでも、約3割の職員が、そこまで巧妙とはいえない単純な詐欺メールに引っかかってしまうのです。
これらのテストでは、詐欺メールのリンクをクリックした人物が特定できるようになっています。リンゲレスタインは、引っかかってしまった職員がいる学校に行って個別指導をおこないました。地道な指導を続けた結果、最初のテストから2年後には平均クリック率が約5%にまで下がりました。
5%まで下がれば成功と言えるでしょうか。そうとは言い切れないでしょう。詐欺集団は大量にメールを送ります。郵便と違って、同じメールを100人に送るのも1万人に送るのも、たいしてコストは変わりません。1万人に詐欺メールを送ってもほとんどの人は無視します。しかし、そのうちの1%が引っかかって100万円を払えば、100人×100万円で1億円だまし取れてしまうのです。だからこの手の詐欺はなくならないのです。