専門家 VS アルゴリズム

「近い将来、多くの職業がAIやロボットによって代替される」という話を聞いたことがある人は多いでしょう。特に、一般事務員・小売店員・工場作業員等の比較的単純な作業の場合、人間に勝ち目はないといわれています。一方、コンサルタント・医師・カウンセラーなどは、機械が苦手な「判断」「臨機応変さ」「共感」といった能力が求められるため人間のほうが優れているといわれています。果たしてそれは正しいのでしょうか。

心理学者のポール・ミールは、訓練を積んだ専門家の予測と、アルゴリズムに基づく統計的予測を比較し、どちらが優れているか分析しました。調査で検証された予測は多岐にわたります。

・専門医によるがん患者の生存年数予測
・スクールカウンセラーによる1年次終了時の成績予測
・経済評論家による新規事業の成否予測
・ワイン専門家によるワインの将来価格予測

専門家は膨大なデータの分析や関係者のインタビューを通じて、総合的な判断を下しました。一方で、アルゴリズムの方は数種類のデータをあらかじめ定められたルールに基づいて計算して判断を下していました。結果はアルゴリズムの勝利でした。いずれのケースでも、専門家の予測精度は簡単なアルゴリズムを下回るか、よくて引き分けでした。

なぜこのような結果になってしまうのか、ミールはその原因を「専門家は賢く見せようとして独創的なことを思いつき、いろいろな要因を複雑に組み合わせて予測しようとするから」と考えました。

テレビなどのメディアに出ている専門家を見ていると、確かにその通りだと合点がいきます。例えば、今後の株価の動きについて専門家が話しているときのことを想像してみてください。素人でも思いつきそうな観点しか触れなかったら、物足りなく感じることでしょう。視聴者も制作サイドも、専門家だから思いつくような独自の観点からの解説を聞きたいのです。そういったオリジナリティ溢れる観点というのは他人の関心を引きやすいものですが、株価への影響度が大きいかどうかはまた別の話です。実際には、誰もが思いつく平凡な観点の方が影響度が大きいことが多いのです。

新入生の1年次成績を予想するケースにおいて、アルゴリズムが参考にしたのは高校時の成績と適性検査の結果のみです。一方、スクールカウンセラーはそれらの成績に加えて、自己申告書のチェックや1時間近くの個人面談も実施します。カウンセラーは複数の観点から総合的に判断しているつもりなのですが、むしろ個人面談の印象など、今後の成績との関連性が薄い部分に影響を受けて判断がぶれてしまうのです。アルゴリズムは、シンプルに、無感情に2種類の成績だけで判断しており、そちらの方がより正確な予測ができるというわけです。

重要な判断をアルゴリズムに任せるというのは抵抗がある人も多いでしょう。しかし、人間が判断する場合、重要度が高い要素を軽視し、個人的な感情に引っ張られるリスクがあります。例えば、採用試験であれば「面接の観点別評価を計算式にかけて点数が一定以下の場合は不採用にする」「適性検査の成績が一定以下の場合は面接の評価にかかわらず不採用とする」といった具合に一部でもアルゴリズムを導入してみてはいかがでしょうか。

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