たたき台というワードの使い勝手

ビジネスにおいて「たたき台」ということばが使われることがあります。たたき台は、刀などを作る鍛冶場で使われる台を意味します。たたき台に真っ赤になった鉄を乗せて、ハンマーで叩いて仕上げていくわけです。それが転じて、ビジネスにおいては「批判・検討・修正を経てよりよい案を作るための原案、試案」という意味で使われます。  

例えば「製品Aの売上をアップさせたい」という課題があるとします。「値下げする」「おまけをつける」「CMを打つ」といったアイデアが出てくるかもしれません。ただ、このままだとアイデア止まりで具体的な施策として実行には移せません。そこで、まずはたたき台を作ってみるという手法が用いられます。たたき台は、最終的な案を作る前の試案です。したがって、ディテールにはこだわり過ぎず、ひとまず形にすることがポイントです。形になっていれば「このロジックは無理があるんじゃないか」「ここはこうした方がいいんじゃないか」といった議論もしやすくなります。

「たたき台」という名目を与えられると、「多少の粗い案でもOK」「修正点がいくつもあって当然」という前提があるので、プレゼンする側も少し気楽に臨むことができます。ただし、あまりも粗すぎると「いくらたたき台といってももう少し仕上げてこいよ」という突っ込みが入る恐れがあります。私も慣れていないときはそのチューニングで苦労した経験があります。たたき台を作れと指示されたものの、細かいところまでこだわって作りこんでいたら「たたき台なんだからもっと早く作れ」と言われたことがあります。逆に「たたき台だからこれくらいでいいだろう」と思って提出したら「さすがにこれじゃ議論のしようがない」と、たたき台ではなく私の方が叩かれました。

さて、たたき台のトリッキーな使い方を紹介します。自分の案をプレゼンする会議で、想定外の指摘やダメ出しが多々入ったとします。そんなときにうなだれて「・・・すみません。改めて練り直してきます」と言ってしまうと「準備不足でプレゼンをするダメな奴」というレッテルを貼られてしまいます。

「これはだいぶ旗色が悪いな・・・作り直しは避けられないだろう」と思ったら、タイミングを見計らって「・・・もちろんこれは最終的なものではなく、たたき台ですので。今回皆さんの指摘を踏まえて修正したものを改めて提示したいと思います」と、堂々と宣言しましょう。本当はこれが最終版のつもりだったとしても、そんなそぶりは微塵も見せてはいけません。自信ありげに言えば「そうか、たたき台のつもりだったのか。じゃあ粗があって当然だな」ということであなたの評価が下がることは避けられるでしょう。「たたき台って最初はそんなこと1mmも言ってなかったよね?最初は『これで行きたいと思うんですがどうですか』ってノリで話してたよね?」と思う人もいるかもしれませんが、皆さん大人なのでまず口にすることはないと思います。

この「都合が悪くなるとたたき台にする作戦」は、やり過ぎるといずれ通用しなくなるので、ここぞという場面で使うといいでしょう。なお、やってみて失敗したとしても責任は一切取れませんのでご了承ください。

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