ある陶芸クラスの実験の話です。生徒たちは2つの組に分けられました。1つの組は作品を「量」で評価し、もう一方は「質」で評価すると告げられました。量のグループの生徒はクラスの最終日までに作ったすべての作品を提出します。各生徒の評価は作品の総重量によって決められます。作品の質は関係なく、総重量が重ければ重いほど評価が高くなります。質のグループは、生徒はそれぞれが最高だと思う作品をひとつ提出し、それが評価されます。その結果、意外なことに最も質の高い作品を出したのは、量で評価されるグループの生徒でした。
量のグループは、どんどん作品を作り続けました。多数作り続けるうちに、技術も上がっていき、結果として質も上がりました。一方、質のグループは、最高の作品を作ろうとじっくり時間をかけて制作に取り組みました。そうして頭でっかちで質の低い作品ができあがってしまったのです。質を上げるためには、頭で考え過ぎずに量をこなしていくことが重要だということがわかります。
ビジネスの世界でも繰り返しの試行錯誤は大切です。優れた起業家は思いついたアイデアを具体的な形にして、うまくいくかどうか検証します。靴のネット通販で有名なザッポスは「返品が可能であればネットで靴を購入してもらえるか」だけを最初に検証しました。そのために、倉庫にたくさんの靴を並べたわけではありません。近所で調達可能な靴だけをサイトに掲載し、注文が入れば創業者自身が近所の店で靴を買って、発送作業までおこなっていました。
検証のために必要最低限な機能の製品をMVP(Minimum Viable Product)といいます。大量の靴をそろえて、流通システムを整えてから検証するとなると、検証を始めるまでの時間や開発費が浪費されてしまいます。そこでMVPで検証をおこない、見つかった問題点を修正して2代目のMVPを作り・・・というように検証と修正を何度も繰り返して、本番用の製品に仕上げていくのです。最初から完璧を目指すのではなく、不完全なものでもどんどんアウトプットを繰り返していくことが重要です。
もしあなたが小説を書いてみたいと思ったら、まずはひとつの作品を書き上げてみましょう。実際に書いてみると、当初の構想とかけ離れたものができてしまったということもあるでしょう。しかし、作品として形になれば、読みにくい部分やストーリーとして破綻している部分など、修正点が見えてきます。修正を繰り返せば面白い作品に仕上がるかもしれませんし、そのプロセスは次回以降の作品にも生かされるでしょう。
始める前にじっくり考えることも大切です。しかし、考え続けるといずれ「これ以上は考えてもしょうがない」というポイントに達します。そこから先は考えても堂々巡りで発展しません。その状態になったら、やるかやらないか決めて、やると決めたらすぐに着手してみましょう。