生きていれば、解決できない問題に直面することがあります。そうしたプロセスについて、心理学者のエリック・クリンガーは「インセンティブ喪失サイクル」と名付けて4段階に分けて説明しました。
解決できない問題に直面した際のインセンティブ喪失サイクル
(1) より一層努力する
(2) 望むような結果が出ないことに腹を立てる
(3) 諦める
(4) その問題のことはどうでもよくなり、新たな目標を設定する
あなたがやりがいのあるプロジェクトを任されたとしましょう。最初はやる気に満ち溢れていることでしょう。プロジェクトが成功して、周りから賞賛を浴びている姿をイメージします。しかし、進めていくうちに一筋縄ではいかないことがわかってきます。プロジェクトは予定より遅れを取り、トラブルも頻発しています。このままでは目標達成などできそうにもありません。最初はなんとか事態を打開しようと努力します。ところが改善の兆しは見えてきません。このような状態が続くと、怒りが湧いてきます。「あいつとあいつが足を引っ張っているからうまくいかないんだ!そもそも予算もスケジュールも無理があった!」などと、犯人探しを始めます。やがて心の糸がプツリと切れて、諦める瞬間がやってきます。そして最終的には自分の中でプロジェクトは「なかったこと」となります。「あのプロジェクトはもう自分の中では終わっている。さあ、新しい目標に向かって頑張ろう」。このようなプロセスを経験したことがある人は多いのではないでしょうか。
一定の努力をしても解決できない問題に直面したとき、人は「そもそもこれは解決不可能な問題だったんだ」と考えて諦めることがあります。そのように考えれば、自分を守ることができます。頑張れば解決できる問題を解決できなかったら、それは自分の無能さが原因となります。一方で、最初から解決不可能な問題を解決できないのは、自分の責任にはなりません。この論法は自分の中で折り合いをつけているだけに過ぎず、根本的な解決にはつながらないでしょう。問題を解決できる可能性を模索して、仕切り直しをすることで軌道修正ができる場合があります。
「フレッシュスタート効果」という言葉があります。年の初め(1月1日)や、年度初め、月の初め、誕生日のような節目に、積極的な目標を立てようと意気込む気持ちを表す言葉です。
年の初めなどの節目になると過去の過ちや欠点と決別し、改めて仕切り直そうという気持ちが高まります。長期的な目標や問題解決に取り組むとき、この心理を利用してみましょう。自分なりの節目を作ってそこで仕切り直しをするのです。
例えば「半年後に5kg痩せる」という目標を立てたとします。1か月運動や食事制限を頑張ったのですが、痩せるどころか1kg太ってしまいました。そうなると「そもそもこんな目標できっこなかったんだ」と諦めそうになるかもしれません。そこで諦めるのではなく、1か月を節目として仕切り直しをすればよいのです。ここまでの1か月間やってきたことを振り返り、その結果と照らし合わせて運動や食事の内容を見直しましょう。こういった仕切り直しの機会を設けないと「1か月頑張って成果が出るどころか事態は悪化するんじゃやるだけ無駄だ」と思って、思考停止に陥ってしまいます。
この仕切り直しのサイクルは、1年や1か月よりもっと短い間隔でも構いません。90分を1つのサイクルとして、1日の間に何回も仕切り直しをしてフレッシュ・スタート効果を得ることも可能です。具体的には、ただ場所を移動するだけでよいのです。それだけで、いったんリセットして改めて高いモチベーションで仕事に臨むことができます。オフィスワーカーであれば、自分の席から空いている席や使っていない会議室に移りましょう。やってみれば、気持ちが改まって効率が上がることを実感できると思います。