私たちの意思決定は、自分たちが思っている以上に他人の動向に左右されています。他例えば、YouTubeのおすすめ動画に猫の動画が2つ表示されたとします。タイトルやサムネイルだけではどちらがより楽しめそうか判断できません。そんなとき、ほとんどの人は再生回数が多い方をクリックするのではないでしょうか。再生回数が多いということは、それだけ魅力的な動画である可能性が高まりますからね。
ソーシャルネットワークなどの研究者、マシュー・サルガニックらは音楽ダウンロードに関するある実験をおこないました。被験者は、人気ウェブサイトの訪問者です。彼らはアップされた新人アーティストの新曲を視聴して、気に入ればダウンロードすることができます。一部の被験者は、対照群として他の人がどの曲をどれだけDLしたか知ることはできませんでした。一方、対照群以外の被験者は、誰がどの曲をどれだけダウンロードしたかわかるようになっていました。DL数が閲覧できる被験者は、無作為に8つのグループに分けられました。彼らは、自分のグループでどの曲がどれだけDLされたか、閲覧できます。
DL数のランキングは、グループごとにまったく異なるものになりました。あるグループで上位になった人気曲が、別のグループでは下位に沈んだり、その逆のことが起こったりしました。各グループの年齢や性別、その他重要な要素に大きな偏りはないので、似たようなランキングになってもよさそうなものです。なぜこのような結果になったのでしょうか。
原因のひとつとして、「人気が人気をよぶ」ということが推測されます。最初にある曲のDL数がたまたま上位に上がると、後続の被験者は「この曲が人気なのか。じゃあ私も」と思ってDLします。このようにして、DL数が加速度的に伸びていくという仕組みです。
サルガニックは、この推測の信憑性を高めるためにある細工をしてみました。DL数が見られないグループ(対照群)のランキングを逆にして(1位の曲が最下位、2位の曲がドベから2番目、・・・、最下位の曲が1位、というように)8グループに提示したのです。そうすると、対照群で本来上位だった曲(つまり、ランキング操作で下位にされた曲)の多くは下位に、下位だった曲の多くは上位になりました。
ただし、対照群でDL数がとびぬけて多かった曲(つまりランキング操作後は超不人気扱いにされた曲)は、8つのグループにおいて当初は下位に沈みましたが、時間が経つと上位に上り詰めました。これらの結果をまとめると、「本当に魅力的な曲は最終的に正当な評価を得られるが、ほとんどの曲は、人気が出るかどうかは運に左右される」といえます。