心理学者によって、大学4年生に対して卒業論文を仕上げるのにかかる時間を推定させるという実験が行われました。学生たちは、すべてが順調にいけば27日、最悪の場合は48日かかると回答しました。最良、最悪の想定を抜きにした予測の平均値は34日でした。実際にかかった日数の平均は55日でした。
こういったことは学生だけではなく、十分に経験を積んだ大人にも起こり得ます。タスクごとに担当者と期限を設定した綿密なガントチャートを作っても、計画通りにいかないことはあります。
あなたが全力疾走すると100mを15秒で走れるとしましょう。このとき、あなたは1kmを15秒の10倍、2分30秒で走れるでしょうか。10kmを25分で走れるでしょうか。無理ですよね。ちなみに10kmを25分で走れたら世界新記録です。自分が100m15秒で走れるからといって、そのペースで走り続けられるかと聞かれたら誰でもノーと答えるでしょう。しかし、仕事のことになるとそのように考えられなくなってしまいます。
あなたが数週間はかかりそうな規模のデータ処理の仕事を任されたとします。どれくらい時間がかかりそうか、すぐに推定できなかったのでちょっとだけ手を付けてみます。全体の5%ほど実際にやってみたところ、2時間でできました。ということは、この仕事全体の所要時間は40時間。このような見積もりは、100m走のペースで長距離を走り続けることができると勘違いしているようなものです。実際には、他の仕事が割り込んんできたり、作業を進めている途中で不測の事態が起こったりして、時間当たりの進捗が遅れることがよくあります。所要期間の見積もりの際は、そういったことも考慮する必要があります。
仮に所要期間の見積もりを間違えても、リカバリーできる場合があります。例えば、本当は50時間必要な仕事なのに40時間でできると見積もってしまったとします。期限は刻一刻と近付いてきます。このようなときに、全体のスケジュールに余裕があれば、空き時間を作業の時間に充てることができます。予定がびっしりだと、足りない作業量を入れられなくなってしまいます。締切を遅らせることができないのであれば、緊急度が低い別の予定を後ろにずらして作業時間を確保するしかありません。この場合、スケジュール調整のためのコストが余分にかかってしまいます。
ちなみに、足りない時間を捻出するためにプライベートの時間や睡眠時間を犠牲にするのはお勧めできません。そのような無理をしてやった仕事はどうしてもクオリティが下がってしまいます。また、プライベートや睡眠を削ったことによるストレスは確実に蓄積されて、将来への負債にもなってしまいます。そうならないために、所要期間の推定の際やスケジュール作成の際には一定の余裕を設けるようにするとよいでしょう。