クーポンとその類似品を使った価格戦略

メニューがハンバーガーのみというシンプルなハンバーガーショップがあるとします。この店のハンバーガーに対して1個300円までなら払えるという客(客層A)と、300円までなら払えるという客(客層B)がおなじくらいいるとします。ハンバーガーの売上を最大化するためには、ハンバーガーの価格を200円にする必要があります。そうすれば、客層Aと客層B、両方に購入してもらえます。価格を300円にすると、客層Aにより高い価格で売ることができますが、客層Bを逃がしてしまいます。

もっと良い価格戦略が存在します。客層Aには300円、客層Bには200円で販売すれば、理屈の上では売上が最大になります。この戦略を実行するためには、それぞれの客がいくらまで出せるか事前に把握しておく必要があります。実際にはそんなことはできないので、客ごとに価格を変えることは難しいでしょう。しかし、「クーポン」という手法を使うとそれに近いことができるようになります。

このハンバーガーショップでキャンペーンを始めました。ネットでダウンロードしたクーポンを提示すればハンバーガーが100円引きの200円になります。一律100円引きではなく、クーポンを提示した場合に限り100円引きというのがポイントです。客層Aのうち、クーポンの存在を知らない人、存在を知っているけどわざわざダウンロードして店員に見せるのが面倒な人は定価の300円でハンバーガーを買います。客層Bのうち、クーポンを使う手間を惜しまない人は割引価格の200円でハンバーガーを買います。客層Aの大部分がクーポンを使わず定価でハンバーガーを購入し、客層Bの大部分がクーポンを使って割引価格でハンバーガーを購入すれば、価格を一律200円にするよりも売上を伸ばすことができるでしょう。

映画館には学生料金というシステムが存在します。学生であるというだけで一般料金よりも安い価格で映画を見られます。もちろん、学生料金でも見られる映画の内容は変わりません。一般的に、学生は暇はあるけど金はないという人種です。「一般料金だと高くて入れないが、割引になるのであれば映画を見たい」という層が一定数いることが見込めます。そのような層を狙って、学生料金が設定されています。映画館の受付で「あなたはこの映画に2000円払えますか?1500円だったら払えますか?」と聞くことはできません。学生料金を設定するということは、映画館は学生を「2000円は払えないけど1500円なら払える客層」と定義しているのです。

話題の書籍は、新刊として販売される際はハードカバーに身を包み、比較的高価格で販売されます。しばらくすると、それよりも安い価格で文庫版になって販売されます。書籍の価値の大部分は書かれている内容にあります。カバーや紙の質が豪華になっても、かかるコストは微々たるものですし、そこに価値を見出す読者は少ないでしょう。つまり、同じ書籍のハードカバー版と文庫版は、同じ価値の商品を異なる価格で販売しているといえます。「その本を早く読みたい。文庫版が出るまで待てない」という読者は、割高でもハードカバー版を買うでしょう。

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