映画、小説、音楽、アートなど、すべての創作物は、過去の創作物の影響を受けています。「まったく新しい、完全オリジナルのストーリーができた」という人は、自分が影響を受けたことに気付いていないだけです。本当に何にも影響を受けていなくて、過去のどの作品にも似ていないストーリーがあるとすれば、前衛的すぎて誰も理解できない代物になるでしょう。
アメリカの大手映画制作会社には、日々大量の企画書が届けられます。それらの企画書をすべてじっくり読み込むことは時間的に不可能であり、ほとんどの企画書は最後まで読まれることなく破棄されます。担当者は、大量の企画書の中からヒットの可能性がありそうなものだけを厳選して読むことになります。
その見極めのために、企画者は「これがどんな作品なのか」ということが直感的にわかるようなキャッチコピーを考えます。例えば、キアヌ・リーブス主演の大ヒットアクション映画『スピード』のキャッチコピーは、「バスが舞台のダイ・ハード」でした
『ダイ・ハード』はニューヨーク市警のジョン・マクレーンが、テロリストに占拠された高層ビルで奮闘するストーリーで、最高のアクション映画のひとつとされています。『スピード』は、ロサンゼルス市警SWAT隊員であるジャックが、テロリストに爆弾を仕掛けられた路線バスで奮闘するアクション映画です。
こうして書いてみると、2つの作品には共通点がたくさんあります。しかし、『スピード』を『ダイ・ハード』の二番煎じという評価は当てはまらないでしょう。『スピード』は既存の作品の舞台設定を変えることで、オリジナリティのある傑作に仕上がりました。
ビジネスの世界でも、既存のものの一部を変えたり、何かをつけ足したり、除外したりすることで数多くのヒットが生み出されました。かつて、食事のデリバリーは店のスタッフが担当するのが常識でした。そのためには、配達用のスタッフ、車両などを準備する必要があります。それに割けるリソースがない店は、配達をしない、あるいは配達できる件数や時間帯を限定的にせざるを得ませんでした。
ウーバーイーツは配達を店員ではなく一般人にやってもらい、車両も一般人の配達員に用意してもらうことで、出前の世界を一遍させました。いまやある程度の都会であれば、ウーバーの大きなバッグを背負った自転車を見ない日はありません。出前という概念は大昔からありました。そういった馴染みのあるものでも、その一部を変えてみるとオリジナリティのあるビジネスになるんですね。
私たちにとってお馴染みのもので、もうそこから新しいアイデアは出てこないと思われるものでも、少し視点を変えてみて一部を変えてみることで、思わぬ発見があるかもしれません。