キーストーンハビットで良い習慣の連鎖反応を起こす

レコーディングダイエットというダイエット方法をご存じでしょうか。どれだけのエネルギーのものをどれだけ食べたか日々記録するというダイエット方法です。「そんなに食べていないのに痩せないな」と思っている人も、仕事をしながらおやつを食べていたり、寝る前に一口つまみ食いしていたりするものです。そういった無意識のうちに口にしているものも含めてすべて記録することによって、自分が日々摂取している本当の食事量を自覚することがレコーディングダイエットのポイントです。本当はカロリー過多なのに、「そんなに食べていない」と思い込むのは問題を問題だと認識できていないということです。レコーディングダイエットをすることで「自分は食べ過ぎている」という状態を認識することが問題解決の一歩になるのです。

問題を認識することができれば、次は食べ過ぎという問題を解決しようという意識が働きます。今までは無意識に食べていたおやつも、「これを食べたらまた記録しなくちゃいけなくなる」と思って控えるようになります。また、インスタント食品などのジャンクフードを記録に残したくないという思いから、より健康的な食事をするように意識が働きます。ダイエットのためにカロリー制限をしたり、健康に気を遣った食事をとったりすることを習慣付けるのは大変です。しかし、レコーディングダイエットを習慣にすることで、そういった大変な習慣も一緒に身に着けることができるようになります。

このように、ひとつの習慣を変えることによってそれが連鎖反応を起こして他の習慣も変わっていくことがあります。習慣の中には、そのような影響力が強いものが存在します。そのような習慣をジャーナリスト、作家であるチャールズ・デュヒッグはキーストーンはビットと呼んでいます。

健康的な体を手に入れるためには、定期的な運動もキーストーンハビットになり得ます運動をするだけで健康的な体になるとは限りません。健康的な食事や十分な睡眠など、他にも重要な習慣はあります。しかし、定期的に運動をすると、多くの人は「せっかく日々運動しているんだから食事にも気を遣いたい」と自然に思えるようになります。適度な運動をしていれば、疲れから自然に早く床に就くようにもなります。運動を習慣づ付けることで、健康のためになる他の習慣も身に付くというわけです。

ビジネスの世界においても、キーストーンハビットを利用して大きな成果を上げた会社が存在します。1987年、アルミニウム・カンパニー・オブ・アメリカ(アルコア)の新しいCEOにポール・オニールという元官僚が就任しました。当時のアルコアは、世界屈指の大企業ではあるものの経営の失敗が相次ぎ、ライバル会社に顧客も利益も奪われていました。投資家たちは新しいCEOになるオニールがどのような経営方針を掲げるのか注目していました。

一般的に。新しく就任したCEOは経営方針として、果たすべき社会的使命や注力する事業を宣言したり、売上・利益・業界シェアなどの数値目標を掲げたりするものです。しかし、オニールが就任会見で発表した経営方針は「アルコアをアメリカで一番安全な会社にする。目標は事故0」という誰も予想しなかったものでした。さらにオニールは「アルコアがどんな状態化を理解するには、現場の安全率を見てください。会社全体で習慣を変えることで安全を確保できるようになります。わが社がどのくらい安全なのかで評価されるべきなのです」と語りました。オニールの方針を聞いた投資家たちは、驚き呆れ、頭のおかしい新CEOのせいでアルコアはガタガタになるだろうと予想しました。

オニールがCEOに就任してから、アルコアは世界でも指折りの安全な会社になりました。オニールの就任前は、どの工場でも週に1回は事故が発生していましたが、就任後は事故による欠勤が0という状態が何年も続いた工場もたくさん出ました。また、社員がケガをする確率は全米平均の約20分の1まで下がっていました。では会社の利益や株価はどうなったでしょうか。アルコアは事故のリスクを減らすと同時に利益も大幅に伸ばしました。2000年にオニールが引退する頃には、年間収益は就任前の5倍、株価も5倍になっていました。

オニールの在任期間中、アルコアの最優先事項は一貫して社員の安全でした。オニールは社員に対して「どんなことでも話し合いをする用意があります。しかし安全のことについては話し合いの余地がありません。社員の安全を守るためにあらゆる手を打つ。その点で私に反論しても、必ずあなたたちが負けることになるでしょう」と語っていました。オニールは現場で働く労働者に「もしも上司が安全の問題に適切な措置を取らなかったらここに電話をしてくれ」と言って、自宅の電話番号を伝えました。実際に社員からは電話がかかってくるようになった。

なぜ安全を守ることが、アルコアの業績アップにもつながったのでしょうか。実は、社員の安全を追い求めることが大きな改革にもつながったのです。社員がケガをしたら、まずその原因を調べます。そして原因を明らかにするためには、製造工程にどんな問題があるのか突き止めなければなりません。問題が判明したら、それを全社員に周知、教育して再発を防ぎます。このプロセスは製造過程の効率化や品質向上にもつながります。このようにして、アルコアは社員の安全を高めながら自然に業績を上げることに成功したのです。アルコアの場合、「安全を追求する」という習慣がキーストーンハビットとなり、それに関連する様々な事柄が改善しました。

多くの人がプライベートや仕事で様々な問題を抱えています。それらをひとつずつ解決するのは大変です。うまくキーストーンハビットを見つけて習慣化すれば、連鎖的に問題が解決していき、事態が好転するかもしれません。

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