前回のブログ「採用面接 VS コイン投げ」で、採用面接の評価と入社後の評価の相関関係は高くないという話をしました。2人の候補者のうちどちらが優れているかという判断が合っている確率は約60%程度で、ランダムに決めた場合の確率50%と大差はありません。
では、なぜ採用面接の評価の精度は低いのでしょうか。ノーベル経済学賞受賞者であるダニエル・カーネマンらの著書「ノイズ 組織はなぜ判断を誤るのか」によると、「客観的無知」と「ノイズ」が原因です。それぞれについて説明していきましょう。
「客観的無知」とは、面接の時点で面接官が知り得ないことや、知り得なくはないが面接官は知る手立てがないことを意味します。面接時に高評価だった応募者が、入社後に離婚して仕事への情熱を失ってしまったとしても、そんなことは面接官は知る由もありません。入社後に所属した部署にいまいち馴染めずに実力を発揮できないということもあるかもしれません。職場での相性というのは、実際に働いてみないとわからない部分の方が大きいのです。
「ノイズ」というのは、ざっくりいうと判断のばらつきを意味します。同じ応募者を複数の面接官が面接した場合、評価にばらつきが出るのは当然ですが、問題はばらつきの程度です。ある調査によると、2人の面接官が同じ応募者を面接した際の評価の相関係数は0.37~0.44で、パーセンテージに直すと62%~65%でした。
また、面接の評価は第一印象に大きく左右されます。私も数多くの応募者を面接した経験から、合否を決める要因として第一印象は大きな比重を占めることは間違いないと思います。私もそうだったのですが、多くの面接官は第一印象によって面接の進め方を変更します。第一印象で好感を抱いた応募者には、困らせるような質問はなるべくしないようにします。また、「仮に入社したとしたら~」という入社を前提とした質問が多くなります。一方で、第一印象があまりよくない応募者には、「不合格とする決め手」となる答えを引き出すような質問をしがちです。
面接官は応募者についてつじつまの合った像を作ろうとする傾向があります。これに関して、「ノイズ」では面白い実験が紹介されています。学生に面接官と応募者の役を振り分けて、面接官はイエスかノーで答えられる質問だけをするように指示しました。そして応募者の一部には、質問にはランダムに答えるように指示しました(質問最初の文字によってイエスかノーを決めるなど)。ランダム回答をした応募者は、回答内容が滅茶苦茶すぎて怒られるのではないかと心配していましたが、実際には面接は無事終了しました。面接官は相手がランダムに答えていることに誰一人として気付きませんでした。さらに、面接官は「応募者について面接から多くのことが得られた。応募者は質問に誠実に答えた」と述べました。このように、人はランダムな回答に対しても、辻褄を合わせて自分なりの筋の通った応募者像を作り上げてしまうのです。
ここまで、一般的に採用面接の評価は当てにならないという話をしてきましたが、評価の正確性を上げる手立てもあります。「ノイズ」では「構造化による採用面接の改善」を提唱しています。これについては次回以降で詳しく紹介します。
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