採用面接にスキルというものが存在するとして、それを客観的に測定することは可能でしょうか。現実的には非常に難しいと言わざるを得ません。営業・販売の仕事であれば、獲得した顧客数・売上・粗利など、具体的に数値化できる指標が存在します。しかし、採用面接に関してはそういったものに相当する指標がありません。
採用人数を指標にすると、多少微妙な人材でも担当者が数字を上げるために目をつぶって通してしまうリスクが出てきます。AとB、2人の候補者がいて、Aを採用したとしましょう。入社から半年ほど経過してAのパフォーマンスを評価することはできます。Aの評価と「仮にBを採用したとして、Bが入社後半年経過したときの評価」と比較して、Aの評価の方が高ければ、「採用担当者はよくAを選んだ」と言えるでしょう。とはいえ、Bを採用した場合の世界を知ることは不可能です。
不採用にしたBが他社で大活躍したとしたら、採用担当者は「なんであんな逸材を採らなかったんだ」と責められるかもしれませんが、実際不採用にした応募者のその後の活躍を知る機会は稀です。そもそも、不採用にした応募者が他社で目覚ましい成果を上げていたとしても採用担当者の失策とは言い切れません。担当者の会社と他社が同じ業種だったとしても、社内の体制やその他さまざまな環境が異なりますから、Bを採用したとしても他社と同様の活躍をしていたかどうかはわからないのです。
世界的に最も有名なバンドのひとつであるビートルズはデビュー前にデッカレコードのオーディションを受けて不合格になりました。その後、ビートルズは別のレコード会社からデビューしてスターへの階段を駆け上がることになります。デッカレコードのプロデューサー、ディック・ロウは「ビートルズを不採用にした男」という汚名を着せられます。しかし、ビートルズがデッカレコードと契約していたら、今と同様の名声を得ていたかどうかは誰にもわかりません。曲は歌詞やメロディがよければ必ず売れるというものではありません。リリースのタイミングやプロモーションなど、アーティストではコントロールできない内容も、曲がヒットするための重要な要素です。
このように、採用面接を質を客観的に診断するのは難しいのですが、経営学者のマイケル・A・マクダニエルらは企業へのインタビューを通じて採用面接の妥当性を調査しました。その方法の概要は以下の通りです。採用面接時の応募者の評価と、入社後のパフォーマンスの評価を比較します。両者の間に強い相関関係があれば、つまり面接時の評価と入社後の評価がおおむね正比例関係にあるのであれば、その採用面接は質が高いといえます。
調査の結果は意外なものでした。一般的な面接(最初に世間話をして緊張をほぐした後、採用担当者が志望動機、経歴、実績、人となりなどに関する質問をして、最後に応募者が質問をして終了・・・といった段取りの面接)において、面接時の評価と入社後の評価の相関係数は0.28でした。この数字を確率に直してみると、2人の候補者がいて、面接でどちらが優れているか判断した場合に、それが的中している確率は60%前後程度しかないことになります。コインを投げて適当に決めると50%の確率で優れた候補者を選ぶことができますが、面接での判断はそれより10%だけいいという程度でしかないのです。
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