以前のブログで「ブルシットジョブ」について語りました。「ブルシットジョブ」とは、「本人でさえ正当化できないくらい完全に無意味・不必要で有害でもある有償の雇用の形態であるが、本人はそうではないと取り繕わなければならないように感じている仕事」のことです。「会議資料作り」もブルシットジョブのひとつではないでしょうか。
会議資料作成のすべてが無意味といっているわけではありません。会議の目的は、議題について議論し、何らかの結論を出すことです。何の資料もない状態で「A社との提携を進めるべきかどうか議論しましょう」と言われても難しいでしょう。議論をスムーズにするために、議題の論点、補足情報、いくつかの選択肢などを記載した資料は必要です。
会議資料で重要なのは、上にあげた論点等が過不足なく明確に記載されているかどうかです。それさえ満たしていれば、ワードにテキストのみで書かれていても何の問題もないでしょう。しかし、そのような質素な体裁の資料が手抜きとみなされてしまう職場もあります。そのような職場では、テキストにすればワード1枚で完結するような資料をこねくり回して何枚ものパワーポイントスライドで構成された資料が標準になります。
パワーポイントで資料を作り始めると、見た目のブラッシュアップに時間をかけてしまいがちです。フォントの種類・大きさ・色や図表の書式など、こだわり始めるときりがありません。私も「このページのメッセージに合うちょうどいいフリー素材はないかなー」と思ってネットのフリー素材を探し回って気付いたら10分経っていたという経験があります。この10分でいい感じのイラストを見つけたとしても、会議資料の質が上がったとはいえません。全社員がこんな調子で無意味な資料のお化粧に時間をかけていたとしたら、時給換算したときのコストは馬鹿になりません。
組織のトップ層が見栄えのいい会議資料を使っていると、管理職や一般社員も会議資料の見栄えをよくすることを重視するようになります。私がかつて勤務していたスタートアップ企業がそうでした。年2回実施される全社会議では、社長をはじめとした役員陣が練りに練ったスライド資料を使ってこれまでの振り返りや今後の展望について説明します。テキストだけのシンプルな資料を使う人など存在しません。こういった環境だと、社員たちも「かっこいい資料を作らなければ!」と考えて、テキストだけなら30分で完成する資料なのに、外観を整えるために3時間かけてしまうのです。
仕事への熱量と資料の見栄えが比例するという考え方も、資料作成時間を長くする原因です。例えば、「商品Aの売上が減少している原因分析と今後の対策」という議題の会議があったとします。テキストだけであれば、ワード1ページで原因分析と対策まで過不足なく書ききることは可能でしょう。しかし、担当者としてはワード1ページの資料だけ用意して会議に臨むのは不安だったりするのです。こん棒一本でボス戦に挑むような気持ちになってしまうのでしょう。そこで、棒グラフと折れ線グラフが混ざった図表を入れたり、テキストなら3行で書ききれる内容をわざわざ複雑なチャートで表現したりしてページ数を水増しします。最後に参考資料としてたくさんのテキストと数字で埋め尽くされた表を何ページか足しておきます(この図表は発表者の話に飽きた出席者が暇つぶしでなんとなく眺めるために利用されます)。そうやって10ページ近い資料ができたら、担当者もこん棒が鋼の剣になったくらいの安心感を得られるかもしれません。