多くの社会人は、職場で目標設定をしたことがあると思います。例えば、1年あるいは半年に1回くらいの頻度で企業全体の取り組みとして全社員が個人やチームの目標を設定し、上司の承認を得ます。設定された期間が終わると、上司とともに目標に対して成果がどうだったか振り返り、評価します。多くの場合、評価結果はその後の昇給・昇進・ボーナス等に反映されます。
こういった組織や個人の管理システムには様々な方法論があります。ひとつはピーター・ドラドラッガーが提唱したMBO(Management by Objectives=目標による管理)です。他にはKPI(Key Performance Indicator=重要業績評価指標)や、OKR(Objectives and Key Results=目標と主要な結果)といった方法も有名です。ネット検索でその概要を見る限りでは、何が違うのかよくわからないというか、どれも結局同じに見えるというのが個人の感想です。
私が以前勤務していた会社は、私が入社したときは社員数20名ちょっとくらいで、社長が半期に1回程度全社員と面談をして、これまでの評価と今後の目標についてフリースタイルで語り合っていました。社員数が倍以上に増えて、上場に向けての準備も始めようかという時期になると、社長が全社員を評価というのは不可能になりました。そこで、複数の有名企業で人事畑を歩いてきた人事のプロを管理職として迎えて人事システムをイチから構築することになりました。
彼は入社後、人事系のコンサルタントを迎えて新たな人事システムの開発に取り組みました。「人事関連の問題を解決してもらうために雇ったのに、さらにコンサルタントを雇うの?」と驚いたものです。それはともかく、人事責任者とコンサルタントが経営陣も巻き込んで鳴り物入りで人事システムが完成したのです。MBOだったかOKRだったか忘れましたが、その方法論を取り入れた目標管理シートが全社員に配布されて、作成を指示されました。社員たちは平均2回ほど人事部から催促されたのちに、シートの記入欄を埋めて上司に提出します。20行くらい書ける記入欄なのに2行程度しか書かないで提出する猛者もたまにいますが、そういうのは上司に突き返されます。突き返された社員は、2行の内容を言い方を変えながら反復して中身を水増しした後、再提出します。単に水増ししただけなので要約すれば2行の内容です。いずれの場合も、書いた内容は提出した1秒後に忘れ去られます。提出された上司も、チェックが終わって承認の連絡をした瞬間に部下が何を書いたかは忘れてしまいます。
その半年後、人事部から「前回提出したシートの自己評価と上司の評価を行ってください」という連絡が来ます。社員たちは奥深い階層に保管されたシートを掘り起こします。複数の目標に対して、自己評価を書きこむのですが当然「まあまあ頑張りました」と書いて提出すると突き返されます。そこで、目標に関連する業務の成果のうち見栄えのするものをいくつか組み合わせて記入欄を水増しして、見栄えがするものにします。この間、書類作成や面談等で大変な時間が費やされます。
当時の会社は社員数十名程度ではありますが、コンサルタントへの費用や社員がかけた時間を時給換算すると、おそらく目標設定とその評価のために数千万円を費やしていたと思います。それよりもはるかに大規模なコンサルティング会社デロイトは、推定で約500億円程度を費やしているそうです。目標を設定して、それを評価することは一定の価値があることだとは思います。しかし、ここまでの費用をかける必要があるのかは疑問です。それについては次回以降に検証してみたいと思います。
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