平均的なパイロットの正体

第二次世界大戦後、アメリカ空軍ではパイロットの墜落事故が後を絶たず空軍にとって悩みの種でした。調査の結果、コックピットの設計に問題があるのではないかという仮説が立てられました。当時のコックピットの規格は1920年代のパイロットを採寸して、その平均値をもとに決められたものでした。しかし、時代が変わってパイロットの体格が大きくなった結果、規格が合わなくなったのかもしれません。最新の平均値を計算するため、1950年、約4000人のパイロットに対して採寸が行われました。

このときの測定担当者の一人、ダニエルズ中尉は「平均値を計算することが問題の解決策なのだろうか」という疑問を抱きました。1950年の調査では、パイロットの体の10か所が採寸されました。ダニエルズは4000人のパイロットのうち、10か所すべての寸法が平均の範囲に収まるパイロットの数を調べました(平均値との誤差が30%以内であれば平均の範囲に収まるものとしました)。その結果、該当者は0名でした。3か所すべてが平均サイズに収まるパイロットは5%未満でした。ダニエルズはこの調査結果をもとに、平均サイズに固定されたコックピットではなく、個々のパイロットのサイズに合わせられるコックピットを提案し、採用されました。

この話から、「平均というのは数学的概念に過ぎない」ということがわかります。パイロットは、一般人よりも体格のばらつきが少ない集団です。身長が大きく平均から外れていたり、太り過ぎていたり痩せすぎていたりしたらパイロットにはなれません。そのような集団でも平均値にピッタリ当てはまる人間はいませんでした。

「女性にはこういう言い方をすればいいだろう」「○○大学出身者だからこういう性格だろう」このような決めつけは、平均値に固定されたコックピットのようなものです。決めつけた通りの場合もあるかもしれませんが、そうでない場合もあります。対人関係においては、相手の属性の平均値ではなく、相手の個性を踏まえて対応する方がうまくいくはずです。

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