「~ていく」という表現が最近気になっています。「~ていく」には様々な用法があります。まず、物理的な移動を表す用法。
(1) 雨が降りそうだったので、傘を持っていった。
(2) 向こう岸まで泳いでいった。
上記の例文は、いずれも物理的な移動を表しています。また、継続して行われる動作や段階的な変化を表す用法もあります。
(3) 引き続き全力で取り組んでいきたい。
(4) 12月に入ってだんだん寒くなってきた。
(3)では継続して全力で取り組むことが、(4)では気温が段階的に下がっていることが表されています。
私が通っているジムではスタジオレッスンというものがあります。参加者はスタジオの中で音楽に合わせて踊ります。レッスンのインストラクターがよくこんなことを言っています。「○時から○○のクラスを始めていきま~す」。この「始めていく」という表現がどうも引っかかるのです。これは物理的な移動を表すものではありません。また、「始める」という動詞は継続性がありません。物事を始めた瞬間に「始める」という行為は完了しますから、「始め続ける」ということはできないのです。したがって、「始めていく」という表現は不自然なのです。普通に「○○のクラスを始めます」と言えばいいのに、なぜわざわざ余計な表現をつけ足して不自然にしてしまうのか謎です。
会議でも「今から○○会議を始めていきたいと思います」という言い方をよく耳にするのですが、この時点で私のモチベーションは40%程度ダウンしています。しかし、「『始めていく』という表現はおかしいです。なぜなら・・・」とやってしまうと、次から会議に呼ばれなくなるリスクがあるので黙っています。
おそらく「始めます」だとシンプル過ぎるから何かよさそうな表現をつけ足したいという気持ちからこういう言い回しになったのでしょう。何事もシンプルがいいと個人的には思います。