書評『えげつないマネジメント』

これまでに数多くのビジネス書を読んできました。今回はその中でも異色の1冊を紹介します。『えげつないマネジメント』(伊吹瞬)です。本に書かれているプロフィールによると、著者は大阪府出身、慶応大学卒。進学塾講師、信用金庫営業マンを経て大阪・梅田の風俗店に末端の従業員として勤務を始め、のちに複数の風俗店を経営し、現在は執筆業をこなしながら経営コンサルタントとして活躍中だそうです。塾、信金、風俗店でのエピソードが盛り込まれています。その中でも風俗店でのエピソードが興味深いです。風俗店のキャストが店のナンバーワンになって経営側にのし上がったというサクセスストーリーはときどき耳にしますが、末端の従業員から経営者になった話というのはあまり聞きません。そういった意味で、他のビジネス書にはない視点がたくさんあって面白かったです。
まず、章のタイトルからして様子がおかしいのです。

第三章 たまには部下を殴ってみよう
第四章 「悪いけど辞めてくれへんかな」と笑って言えますか?
第六章 ヤクザ屋さんが攻めてくる

およそ普通のビジネス書には出てこないようなワードばかり。「たまには部下を殴ってみよう」なんて、「たまには部下とランチに行ってみよう」くらいのノリで提案しないでほしいですね。第三章「たまには部下を殴ってみよう」では、筆者が経営している風俗店での困った従業員のエピソードが語られています。その従業員は、何度注意しても仕事中に漫画を読むのです。そんなやつクビにすればいいと思うかもしれませんが、その程度のことでクビにしていたら働く人間がいなくなってしまうそうです。ある日、店の売上が落ちているときに筆者が抜き打ちで店に行ってみると待機室には隣に漫画を置いて寝ている彼の姿。筆者は反射的に彼の脇腹に回し蹴りをお見舞いしました。その後、彼は二度と仕事中に漫画を読まなくなったそうです。何度となく口頭で注意しても直らなかったものが、キック一発で改善させることができたのです。面白いエピソードなのですが、一般的なビジネスに応用できないのが玉にきずです。
他にも一般的な社会人にとっては「そもそもそんな状況にならない」「似たような状況になっても真似できない」という話がほとんどですが、一部応用できそうな話もあります。第四章「「悪いけど辞めてくれへんかな」と笑って言えますか?」では、従業員を解雇する際の極意が語られています。

それまで組織のために働いてきた人間にとって、その組織が生き残るために自分が排除されることは屈辱以外の何物でもない。その尊厳を傷つけずにクビ切りを行うというのは不可能だ。(中略)
首を切るに当たって最も大切なこと。それは、
「絶対に遠まわしに言わない」
ということである。切るときはバッサリと切ることが肝要だ。切り捨て御免の精神で立ち向かおう。解雇された人が次なるステップへと前向きに転換できるように導くことこそ、最低限の愛情なのである。 『えげつないマネジメント』p183~184より引用

なお、首を切られる側になった場合は、上にも書いてあるように割り切って次のステップに進むことが大事です。精神的に大きなショックを受けるかもしれませんが、自分自身が否定されたわけではありません。その人の性格や能力が、今の職場にはマッチしなかっただけなのです。
今回は異色のビジネス書「えげつないマネジメント」を紹介しました。伊吹瞬氏の著書をネットで探しましたが、これ以外には見当たりませんでした。また続編が読んでみたい作品でした。

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