結婚か入籍か

「私、AとBは●月▲日に入籍致しました」という報告を見れば、ほとんどの人は「AさんとBさんが結婚したんだな」と理解するでしょう。しかし、「入籍」という言葉は「結婚」と同じ意味ではないのです。
戸籍法上では、入籍とはすでに存在する戸籍に入ることを意味します。入籍には様々なパターンがあります。

1.生まれた子どもが出生届に基づいて父母等の戸籍に入る
2.養子縁組等により養子が養親の戸籍に入る

1は原始的入籍と呼ばれます。夫婦の間に子どもが生まれた場合、通常その子どもは両親の戸籍に入ります。2は移転的入籍と呼ばれます。養子縁組によって、養子は元の戸籍を離れて養親の戸籍に入ります。結婚の場合、初婚同士であれば男女はそれぞれ別々の戸籍に属しています。それが婚姻届を提出することによって、それぞれ元の戸籍を離れて新しく夫婦の戸籍を作ります。新たな戸籍を作るのであって、もともとあった戸籍に入るわけではないので法律上の入籍とはいえません。ちなみに子連れの再婚で、子どもを結婚相手の戸籍に入れる場合は入籍の手続きが取られますが割合から考えれば少数派でしょう。ほとんどの場合、結婚のことを入籍と呼ぶのは法律上誤りだといえます。

ではなぜ結婚のことを入籍と呼ぶようになったのでしょうか。その理由としてよくいわれるのは、「戦前の制度の名残り説」です。戦前の旧民法下では、結婚した男女は新しい戸籍を作るのではなく、女性が男性の戸籍に入っていました。当時の制度や考え方の名残りで、戸籍制度が変わった現代でも結婚イコール入籍と考える人が多いという説です。
もう一つ考えられる理由は、「入籍という言葉が使い勝手がいいから」ということです。結婚という言葉は、「婚姻届を提出して法律上の夫婦になること」という意味以外にも、「結婚式を挙げる」「同居して夫婦としての生活をスタートさせる」「双方の親族と親戚関係になる」といった結婚に伴う様々なイメージを想起させます。「婚姻届を提出する」という手続き上のアクションだけを伝えたいときに入籍という言葉が非常に便利なのではないでしょうか。例えば、結婚式や新婚旅行はしないで婚姻届の提出だけ済ませて夫婦生活をスタートさせる場合に、「入籍だけ済ませた」といえばスムーズに相手に伝わります。「先に同居を始めて事実上夫婦のような生活をしているが、婚姻届の提出はまだ」という場合も、「同棲してるんだけど入籍はこれから」という言い方ができます。
報道各社の中には、「本来の意味ではない『入籍』は『結婚』や『婚姻届を提出する』などに言い換える』という取り決めをしているところもあるようです。私も言葉は本来の意味で使いたい派なのですが、「先月入籍しました」と言われて「入籍?養子に入ったんですか?」などと言ったら今後は「子どもが生まれた」といった報告も来なくなること請け合いです。心の中で「入籍じゃなくて結婚な!」と思いながら、「そうですか。おめでとうございます」とお祝いの言葉を伝えています。

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